指板が割れるメカニズム【本当にダメになってしまっているネックの研究-1】

これは数年前に、とある仲の良いお客さんがオークションで手に入れたというネックです。 あまりにも状態が悪いので所有権を放棄して帰られましたので、それからずっとうちにあります。

本当にダメになったネック

指板の表面がバッキリと割れています。 ネック材が柔らかくてトラスロッドナットがめり込んでいった結果、押しつぶされた木部が指板を持ち上げて割れるのです。

反った分を指板を削ることで無理やり修正しようとすると指板が薄くなって強度がなくなり、さらに割れやすくなります。

指板が割れている

ネック裏はこんな感じ。 スカンクストライプがないので、トラスロッドは表側から仕込まれています。

ネック裏

メイプルにメイプルが張られているので、境目がパッと見ただけでは、よくわかりません。

ナット部分

バインディングのラインがぼやけているので、指板を削ったあとに貼り直したような気配がありますね。

バインディング部分

ヒールはこんな感じ。 ネジ穴もダメになっていそうです。

ヒール部分

トラスロッドがめり込んだ分、スペーサーが入っています。 これがまたさらに木部をつぶしていくのでしょう。

こういうネックにはベンドロッドは向きません。 潰れて、反って、締めてを繰り返していつかは割れるだけでしょう。 2ウェイロッドとかチャンネルロッドといった構造のものに交換すれば何とかなるかも知れませんね。

ロッドナットを外したところ

どうなっているのか知りたくて、研究のためにバラします。 まずはフレットを抜きました。

フレットを抜いた

1フレットのブロックポジションマークを外しました。 ここも埋木の横が割れていますね。 そもそもこれはベンドロッドなのかどうかもよく分かりませんね。 ロッドのストッパー部分が出てくるのかと思ったのですが埋木は真っ直ぐです。

1フレットのポジションマークを抜いてみた

エンド側もマークを外しました。 埋木周辺から割れています。

ポジションマークを抜いてみた

バインディングを外した結果、指板は1弦側が多めに削られていることが分かってきました。

エンド側の指板の残り具合

サイドポジションマークの位置が変わっていますね。 上のマークの中央が指板の貼り付け層です。

1フレットの指板の残り具合

ナット付近の指板の貼り付けはこういうラインです。

ナット部分の指板の残り具合

これ、一度指板を剥がしてみたいですね。

こういう「ロッドトラブルでたたき売られてしまっているかわいそうなネック」たちをまた使えるようにできないものでしょうか。 ロッド入れ替えを練習するのもいいかもしれませんね。

木が柔らかいのは強度面で問題ですが、もうこれ以上地球の木を切れないようになってきていますし(ローズ材もきびしいですよね)、あるものを大事に使ってみるのも良いかもしれないという気持ちになってきているのです。

学生時代を共にしたグレコとかフェルナンデスとかも、復活させてまたガンガン鳴らしてほしいと思っているので、修理受け付けを再開したら押し入れから出してオーバーホールに持ってきて下さい。