ずっと悩んでいたブリッジ付近の謎の共振のメカニズムが分かってきました。 どうやらサドルのオクターブネジが弦振動に共鳴するようです。
ギブソン系のブリッジに付いているサドルはよく下図のように傾いています。 これはサドルのネジ穴が下側に誤差が出るように加工されているからです。 上に誤差が出るとそのサドルにはネジが通らず、そのまま廃棄になってしまうからではないでしょうか。
サドルがシーソーのように動いてしまいあまり良い状態とは言えないのですが(弦溝切りの作業もしにくいです)、ひとつ利点があるようで、弦の張力がかかったときにオクターブネジを下に押さえ付ける方向に力がかかるので、ネジの共振が抑えられるのです。
精度良く加工されたサドルの場合は下図のようになります。
サドルの両脇がしっかりブリッジに付いていて弦振動を上手くボディまで伝えてくれそうですが、一直線上に並んだネジ穴の中でネジが遊んでしまってカラカラと共振することがあるようです。
ネジの先にグリスやネジどめ剤をさすなどすれば止まることが多いようですよ。 ネジに合ったナットを付けてブリッジの内側からネジを突っ張るという固定方法もあるかもしれません。 ちょっとタイトすぎる気がしますが。 人間と一緒でギターも遊びがあるくらいが良いように思います。
2・3・4弦のローポジションでのビリつきは、微妙な逆反りとブリッジの反りだと思われます。 写真のようにストレートをあてると隙間ができます。 1・6弦に合わせてブリッジの位置を決めると中央の弦高がとても低くなってしまうのです。
弦を張るとこの反りはさらに大きくなります。 元の状態に戻る方向に力をかけるしかないのですが、同業者によるとその方法をギタークラフト科の生徒に教えている最中に折れたそうなのでリスクの伴う作業であることは確かでしょう。 お客さまと相談しながら直します。