非安定型トランス式アダプターについて

お客さまから「一部のエフェクターに『トランス式アダプターをつながないで下さい』と書かれたものがあるのはなぜですか?」というご質問をいただきました。 コラムとして、とてもいいテーマだなと思ったのでここにも書き残しておきます。

そのエフェクターについてはハッキリとしたことはメーカーに聞いてみないともちろん分からないのですが、私にはトランス式アダプターの特性に関係があるように思います。

マルツという電子部品屋さんのこのページを見てみて下さい。

グラフ1にあるように、安定化回路を省略した一番単純な構造のトランス式アダプターの場合、定格電流量を取り出したときに定格電圧になるように設計されていています。

つまり何も機材をつながないときには表示より電圧が高く、機材が電流を必要としたときに電圧が下がってくるというような変化があるのです。 例えば9Vと書いてあるのに15V出ていたとかそういうことが起こりうるわけです。

トランス式アダプターでも安定化回路(トランジスタで組むにしろ、完成品のレギュレーターICを使うにしろ、何かしら半導体を使います。)を内蔵した物であれば、機材の消費電流がアダプターの定格以下に収まっていさえすれば電圧は変わりません。 (余談ですが、定格以上の電流を取り出そうとするとグラフ3のようにレギュレータICの保護回路が働いて一時的に供給が止まると思います。 非安定化の単純なアダプターは熱ヒューズが燃えて終わりのような気がします。)

トランスが非安定化型であっても、パワーサプライが素通しのたこ足配線構造になっているのではなく、安定化回路を組み込んだ構造になっていれば、これも出力電圧が変化しません。

 

写真は私が作ったパワーサプライです。

パワーサプライ

赤矢印のインプットは非安定化型の12V(実際は無負荷時15Vくらい出る)ですが、オレンジの回路で9.8Vに安定化されますので、水色の出力は何をつないでも9.8Vで動きません。

サイトを見たところ話題に上がったオプティカルコンプは消費電流が約230mAと結構多めでした。 おそらく光学素子でゲインをコントロールするためにLEDかなにかを付けたり消したりするのにも電流をたくさん使っていると思われます。

ですので警告の理由としては、アダプターの電圧が高くて内部の部品が壊れることがリスクなのか、電流を取り出したときに電源電圧が下がってしまうことによる誤作動や効き方の変化が問題なのか、両方考えられます。

おそらく両方問題なんでしょうね。内部でプラスマイナス15Vに昇圧しているようなので、もしこれを越えるとオペアンプがそろそろ壊れる値ですし、コンプは効き方が命なのに、電源電圧の変化のせいで効き過ぎたり歪んだりしてはもともこもありません。 こだわるならこのコンプだけ電源を専用にしても良いくらいかもしれません。

もしメーカーに確認の問い合わせをするなら「私の使用している電源は非安定化トランス式アダプターを使用していますが、パワーサプライには安定化回路が付いています。 エフェクター全ての総消費電流も問題ありません。 この場合は非安定化トランス式アダプターを使用しても問題ないという理解で良いでしょうか?」みたいな訪ね方をするのが良いかもしれませんね。

先日の寒波のように、電力供給が不安定になってコンセントに来ている電圧が100Vからジリジリ下がる時には、単純な構造の非安定型トランス式アダプターはそれに比例して出力も低下することになります。