古いジャズベースをお預かりしました。
4弦の音程がアンプを通したときに気になるそうです。 ピッチが不安定でシャープするとのこと。 また、ピックアップを叩いた時にカンカン音がするのが気になるそうです。
ミュートしたときにフレットと弦が当たる音が大きいのも気になるそうです。 私の弾き方ですと、右手のゴーストノートに対して反応が強い気がします。 ただピックアップの特性のように思うので、ネックがそっていることによるフレットと弦の当たり具合以外は正常ではないでしょうか。
トラスロッドナットがめり込んでいます。
3弦をミュートするためにテープが巻かれています。 ナット上で弦に角度が十分についていないからヘッド側へ振動が逃げてしまうのだと思います。 これはおそらくネックが順反ったときに調整のために指板を削りすぎてしまっています。 こうならないためにヒーター修正はやっぱり必要です。
全体的にポジションマークが薄くなって透けていますね。 材が柔らかくてロッドナットがめり込む→ネックの順反りが止まらない→指板を削ってつじつまを合わせる→指板が薄くなる→ロッドナットで押しつぶされた木が指板を押し上げて指板が割れる→さらにネックの順反りが止まらなくなる・・・ということが起こっています。
最終フレットも他に比べて削り込まれているので、これも順反りを削って合わせた形跡です。 調整がアンバランスになっている原因はネックの大きな反りで、これを本気で直すには指板の張り替えしかないと思います。 大がかりな木工が得意な工場部門があって修理もやってくれるメーカー系ショップに頼んだ方が良いと思います。
指板を張り替える必要があるところまで削られたネックというのは意外に出会わない物でこの仕事を20年近くしていてこれが2本目です。 前職のラ社で働いていたころに見て以来ですね。 あとは数年前にお客さんにもらったジャンクネックもこうなっていましたね。
ペグブッシュが浮いていますね。 これは修正しましょう。
1メートルのスケールをあてて、理論上オクターブチューニングはこのあたりにきそうというところにサドル調整しました。 今の弦が磁化している可能性もあるので、弦を交換してどうなるか試します。
ピックアップは確かにマイクロフォニック現象が見られます。
ワックスポッティングしてみる価値があると思います。 ポールピースを触るとジージー言いがちなのは古いフェンダージャズベースにありがちなコイルの巻き始めをホットにしてある配線のせいだと思われます。
巻き終わりがコールド(アース共通)になっているとシールド効果がありますが、ポールピースとホットが近いので手で触ったときにノイズが乗りやすいです。 ピックアップフェンスやブリッジカバーを付けたまま弾くことを前提にデザインされていたのでこうなっているようです。
ワックスに漬け込んでみたり、必要であれば白黒の線も逆に繋いでみたりしてもいいかもしれません。
ネックが順反っているからサドルが下がっているとか、その分だけピックアップが弦に近づくとか、フレットと弦が最終フレットあたりで当たるとかそういうことがアンバランスさの根本的な原因のようなので、どのくらい良くなるかはやってみないと分かりませんね。
ネック調整ができない以上、問題を完全にリセットはできないので、できることは少なく簡単なことを試す感じになります。