コイルを使ったミッドカットの試作

出回っている回路図にはコイルの型番しか書いていなくてインダクタンスが分かりません。 基本的にはバリトーンスイッチに似た回路ですので0.5~1.5Hくらいなのかな?と予想していろいろつないでみています。

コイルを使ったミッドカットの試作

回路図には0.01μFと書かれていますが、0.1μくらいにするとハーフトーンをエレアコ風にミッドカットできて面白いような気がします。

ただ、コイルの並列容量か何かが別のピークを産み出しているような変なローミッドブースト感を感じるのですが、シミュレータを回さないとどうなっているのかよく分かりませんね。 バリトーンスイッチは確か100kΩの抵抗を直列に入れてフィルタを作りますが、これはピックアップコイルのインダクタンスや直流抵抗値、並列容量などと直接共振するので難しさを感じます。

なので結局ギターに入れるよりバリトーンスイッチの一部を取りだしたものとしてケースに入れる方が使いやすそうです。

あと、コイルのインダクタンスを調べようと海外のフォーラムをみていたら、「当時のギブソンはLCRメーターがなくてスタッフも正確な数値を知らなかった」みたいな嘘かほんとか分からないような話もあって面白かったです。 秋葉原で500mHのコイルが入手可能なので3個くらい買ってきて、コンデンサと一緒にいくつか直列つなぎしてみてはいかがでしょうか。


ストラトのピックアップをまき直してみる

私のストラトにはラ社に勤めていたころの試作PUがそのまま付いていました。 3弦のポールピースを下げてあるのが特徴です。 3弦が巻き弦の時代にデザインされたままの高いポールピースのピックアップに今時のプレーン3弦を張ると、どれだけフロントピックアップを下げても磁力に引っ張られてワンワンとうなりが止まらないのです。

ただ、それを含めてギタリストは演奏しているので、この仕様に変更したピックアップの音を楽器店の店員さんに聞いてもらったら「ギターボーカルは使いやすそうだけれど、ソロを弾く人はすごく違和感を感じる」と言われました。 それは確かにそうだと思いますね。

外したピックアップ

’60s風な設計で、フロントは8300ターンとかで、リアは9000ターンを越えるくらい巻いてあります。 フロントは6弦がややぼやけて1弦の高い音が拾いきれないのですごく斜めになって下がっていましたし、9000以上巻いてもやっぱりストラトのリアは耳が痛い音がします。 いろいろ試してみたくなったので巻き直してみます。

コイルを取り除いた

フロントピックアップからはタップ線を出します。 ターン数を下げたピックアップを勧めているyoutubeチャンネルさんがあって、先方のSEOに便乗したりサジェストを汚染してはいけませんから名前を出しませんがみんな大好きなあのリペア屋さんのあれです。

タップ線を出す

ターン数にリスペクトを込めておきました。

ターン数

ちなみにセンターは2000だけ巻いて7000のリアと直列に入れます。 リアハムは見た目が好きではないし、音もシングルよりにしたいのでトータルは9000になっていてビンテージ風ハムバッカーくらいありつつ、巻き数はリアによっています。

センターは2000t

フロントはトータルで7000まで巻きました。 もともと8300くらいだったのを減らしたのですごくスッキリしました。 セッティングも1弦側と6弦側でフラットになったので気に入っている証拠だと思います。

もともとストラトが設計されたときは7000ターンだったはずですが、巻いてみるとボビンに対してすごくちょうどいい感じがします。リア用に9300とか巻くとカバーに引っかかりそうで危なっかしいくらいです。

フロントのタップ線は本当に面白いです。 良いアンプを所有している人でカッティングする人は一生弾いていられるのではないでしょうか。 人間の耳が敏感な数千Hzを越えたもっと上にエッジが伸びているので切れ味があるのにきつくない、低音が整理された音という感じでした。 もちろん音量は下がるのでゲインの補正は必要です。 ハーフトーンに比べてタッチがそのまま出るのでアクセントやニュアンスを付けるのが上手い人は大好物だと思います。

試しに2000ターンをフロントの7000に並列で混ぜてみたのですが、こちらは音量が下がりすぎてノイズとの比率が気になりました。 外来ノイズもサーっと高域へ伸びていて、ギターの音域とかぶってくるのでアンプで生演奏なら使えそうですが、ヘッドホンや録音だと環境を選ぶと思います。

フロントのハーフトーンって、人によってはサウンドだけでなくノイズをキャンセルしていることに意味があるのかも知れません。 今回はあえて同巻き同磁極で作りましたが、センターも巻き数をそろえて(場合によっては少なく巻いて)、逆巻き逆磁極にしたほうが個人的には使いやすいと思いました。


マスタートーンをふたつ付けてみた

容量の違うコンデンサを使って、マスタートーンをふたつ付けてみることにしました。 ストラトのトーンに0.047μFを付けた場合、絞り込んだときに1弦の基音の音量ごと下がってきてしまうことがあるので、もう少し容量の小さい物を付けてみることにしました。 たまたまあった0.027μFを使います。

コンデンサは皆さんそれぞれテンションの上がる物をご自由にお選び下さい。 私は電子工作に興味を持った頃に、大阪の電気街で買ったような懐かしいデザインのこれにしました。 楽器に登載するコンデンサとしては不人気ですが、個人的には逆に懐かしくて良いです。

懐かしくて逆にテンションが上がる

ポットは洗浄して使いました。 トーンが常時2個になるので、トーンポットの抵抗体を3番端子付近で削ってフルにしたときアースから切り離されるようにしておきました。

トーンはフルアップ加工した

こんな感じにしました。

2種類のコンデンサを使ったマスタートーン

結果から言うと、小さい方はもっと小さい値を試してみたいですね。 0.01μFとかにしてみます。 0.047の方はコイルと組み合わせてバリトーンスイッチみたいにノッチフィルタにしてみたくなりました。 プレゼンスを残してトレブルをカットできるとふたつのトーンの連携が生まれそうな気がします。


2回路5接点のレバースイッチ

アナログデザインの10ターミナルスイッチです。 構造はオーク社の物に似せてあるようですね。

通常の5ウェイスイッチはクリック感が5カ所あるだけで実際には3接点で、途中で両方の接点につながっているところで止めることができるだけの3ウェイスイッチの改良版になっています。 このスイッチは本当に5接点あるタイプです。 スーパースイッチと呼ばれる4回路5接点は基板が2枚になっていてこれの倍の回路になっています。

2回路5接点のレバースイッチ

機能としては問題なさそうです。 赤い線で囲った軸の部分に遊びがなくて本家よりも立て付けが良く個人的には気に入りました。

立て付けが良い

通常の5ウェイスイッチは切り替え時にどちらかの端子には絶対つながるので、もし変な位置で止まっても音が出ない瞬間がないのが優秀なところで、こういうスイッチは多機能なところが魅力ということになります。 ちなみにクリック感がしっかりしているので、接点が変な位置で止まることはなかったです。

「ストラトでフロントとリアのハーフトーンを出したい」とか「タップの音が出るポジションを作りたい」とかそういうことに使えそうです。


御宿海岸の猫

お客さんが見せてくれました。 HSWのSPICEの実機です。

SPICE

話題になった、ビンテージワイヤでホットとコールドを結線しただけという圧巻の中身がこちらです。

圧巻の中身

ちなみにSPICEは絶縁ジャックを使用していません。 コールドのビンテージワイヤとケースがショートしています。 では、ピックアップへの戻りの電流は果たしてビンテージワイヤの中を流れているのでしょうか? それともアルミケースの表面を流れているのでしょうか?

シュレーディンガーの(=^x^=)

これはとても難しい問題で、おそらくですが人間が観測しようとするまでは一粒の電子が波のような確率的に分散した存在となって配線材とケースの両方を同時に流れます。

しかし人間が観測しようとするとその瞬間、電子は粒子となってビンテージワイヤ側で現れたり、アルミケースの表面で現れたり、どちらか一方にだけ存在するようになるはずです。

つまり量子力学の「シュレーディンガーの猫のパラドックス」がこのエフェクターには存在しているのです。

 

 

レコーディングエンジニアのお客さんが、ボードの最後に入れてみたら音が良い感じに落ち着いたからつないで録音したことがあると言っていました。 皆さんもお気に入りの電線で似た物を自作チャレンジされてみてはいかがでしょうか。 ちなみに私はDCジャックのスルーを追加した「ほんだし」を自作したことがあります。 「ほんだし」は、12V仕様の古いBOSSエフェクターの保護ダイオード回路をショートさせて9V駆動するためのダミーエフェクターとしても使えました。

4年ほど前に御宿にお邪魔して以来お目にかかっていませんが本多氏は元気にされているでしょうか。