テスターで計測【MU-TRONⅢの修理-2】

分解する前に写真を撮っておきました。 中身はこんな感じです。

原因追及のためにバラす

ベースをつないでミュートロンを駆動させながら、制御系の挙動をテスターで計測していきます。

抵抗値を測る

ピンクの○の抵抗値を測っているのですが、その上にある220kΩを測ってしまっています。 ベースの音に合わせてこの抵抗値が変化するはずなのですが変わりません。

ステートバリアブルフィルタ部

少し分解してみました。 「→」が書いてある黒い部品がアナログフォトカプラです。 この右側、矢印の先がさっき測ったところで、CDSという「光が当たると抵抗値が下がる物質」を使った抵抗体が入っています。

アナログフォトカプラ

左側がLEDが入っているところです。 そこには下のオペアンプICから電流が来るのですが、電位の変化が計測できます。 ということはアナログフォトカプラの中のLEDが故障したということでしょうか。

マイナスの電位になったりするのでちょっと心配です。 故障のさらに原因があるのかもしれないのでもう少し詳しく見てみます。


カポタストの改造

カポを付けると音階がかなりシャープしてしまうギターの続きです。 サドルの取りつけ位置がすこしネックよりなのが、おもな原因ですが、カポのバネが強すぎるのも、もうひとつの原因です。

試したいことがあるので試作します。

フレットの高さが0.8ミリあるので、0.5ミリの厚みの薄板を作ります。

PPシートを切る

カポに取りつけるために穴をあけていきます。

穴あけ

穴があきました。

窓を切る

取り付けてみました。

カポに付けてみる

まったく効果がなかったです(笑) 普通にセオリー通り、カポをフレットの側につけたり、バネの力が調整できるカポに交換する方がいいです。


故障箇所の探索【MU-TRONⅢの修理-1】

ミュートロンの修理です。 音は出るのですがピャウピャウ言いません。 フィルターの制御系がおかしいですね。 写真で見て分かるようにRANGEスイッチが上手く稼動していません。 こういう物理的な不調と電子的な不具合が連動することがあるのもエレキギター修理では要注意なポイントです。

ミュートロン

電池がないのでキャンドゥに買いに行きます。

ミュートロン

基板を見てみました。 以前修理したミュートロンは基板の酸化による断絶が原因でした。 今回ここは問題なさそうです。

基板は異常がなさそう

こちらは以前、ミュートロンの修理をしたときに、ネットで拾った回路図です。

ネットで見つけたミュートロンの回路図

こちらがステートバリアブルフィルタ部。 円く印をしたところの抵抗値を変えることで周波数を移動できます。 アナログフォトカプラでここの抵抗値を動かすことで周波数を動かしています。 ?マークのところがフォトカプラですね。

ステートバリアブルフィルタ部

アナログフォトカプラは、光が当たると抵抗値が変わるCDS(硫化カドミウム)とLED(発光ダイオード)を向かい合わせにした部品です。 入力信号の強弱でLEDを点滅させて、その光でフィルターの効く周波数を動かす仕組みです。

エンベロープ信号制御系

オペアンプA5 付近で信号をエンベロープ信号にしてオペアンプA6がLEDの点灯を担当しています。

アナログフォトカプラが機能していない理由が、フォトカプラの故障か、A6の故障か、A5の故障か切り分けましょう。

もしオペアンプの故障なら4558系に置き換えれば良さそうですね。 LEDをドライブするのにどのくらい電流が使われているのか分かりませんが電流量が必要なら4580とか4556とかも考えましょう。

はてさてどうなることやら。 うまく直ると良いですね。 A5 A6の出力電位をアナログテスタの針で見るところからでしょうか?


レスポールスペシャルにモントルーバダスを付けました

モントルー社が販売するバダス型ブリッジに交換するためにギターをお預かりしました。

ブリッジ交換前のスペシャル

交換前に付いていたブリッジがこちら。 バータイプのブリッジです。

元のブリッジ

バダス型ブリッジに交換しました。 1弦と6弦はこの位置になります。 フロントピックアップとリアピックアップのポールピース上を弦が通りつつ、フレットの両端から弦までの距離が左右均等になる位置がこのあたりです。

1弦と6弦の位置

その1弦と6弦の距離を5等分しました。 このように弦溝は1弦側によりつつ、6弦側はサドルのセンターに近い位置になるように並ぶことが多いですね。

バーブリッジにオクターブ調整用の山が付いているタイプのブリッジは、弦長方向に垂直に付いていますので、そのタイプのギターにこのブリッジを取りつけると弦溝はサドルの中央に来ます。

このあたりはややこしいところなので、取り付けの困ったらこちらのメールフォームから御相談下さい。

弦溝を切る

弦を張り終わったところです。 ここから弦高とオクターブの調整が始まります。

オクターブは各弦の調整もできますが、左右のネジでもできるのでそのバランスを取ります。 基本的には1弦も6弦も限界から0.5~1.0ミリくらい余裕がある状態でセッティングして、左右のネジでブリッジ自体の前後でオクターブが決まるというのが健全な状態ですね。

弦を張ったところ

調整が完了したところがこちら。

完成

このトグルスイッチ周りがカッコいいのですが、これって何かアニバーサリーモデルなのでしょうか?


すり合わせとノイズ処理【ES-335のネット交換-2】

接着した部分が乾きましたので仕上げました。 おそらくこれで問題なく使えます。

割れの修正が完了

ヒーターが一発でそこそこいい感じに効いてくれたので、すり合わせもしていきます。

フレットすり合わせの準備

すり合わせをし終わったところです。 フレットの頂点を丸めるやすりを使っています。

フレットのすり合わせ

ナットを取りつけるところにたまった接着剤を取り除いていきます。

ナット交換

粗加工をすませた牛骨ナットを取りつけました。

粗加工牛骨ナット

成型して、弦溝を切っていきます。

ナット溝を切る

弦が張れました。 これで完成のつもりだったのですが、ヘッドホンで音を確かめていると5・6弦を弾いたときにどこかからファサファサとノイズが出ます。 弦を触っていると消えるので、アース関係が微妙に接触していて振動に合わせて悪さをしていると思われます。

弦が張れた

あちこち触っていて分かったのは、フロントピックアップのつり下げネジをいじるとそのノイズが出るということです。

フロントピックアップ周りからノイズが出る

この80年代くらいのギブソンについている、ベースプレートが基板になっているタイプのハムバッカーが悪さをしているようです。

PAFの場合、ベースプレートはアースされた金属なので、ネジもバネもアース電位に繋がります。 ですが、このタイプの場合は絶縁性の基板素材に接しているのでアースにつながりません。

振動に合わせて金属製のピックアップカバーにバネがあたったときだけアースにショートしたりオープンになったりするのでファサファサいっているのです。

ハムの取り付けビスからノイズが出る

ちなみにリアピックアップは、たまたまカバーにバネがあたらないらしく、ノイズは出ません。

リアは完全に絶縁されていてノイズが出ない

宙に浮いた金属はノイズを寄せ付けるアンテナになりがちなので、できればアースにつなぐことで対処したいのですが、簡単な方法はありません。

ですので、今回はネジとバネを金属カバーから絶縁する方向の処理をしました。

絶縁テープを貼った

バネがあたりそうなところに、ハムバッカーのコイルに巻く絶縁テープを貼りました。

これでノイズが出なくなったのでお返ししたいと思います。 レコーディングに使う楽器なのだそうです。 もしかしたらネジとバネの絶縁が一番大事な作業だったかもしれませんね。