古いギターは特に、ローズ指板の木がもろくなって、フレットを抜いたときに指板がこんな風になりがちです。
テフロンなどの接着剤のつきにくい素材でできた0.5ミリのついたてを使って埋めます。 とは言え、全部本気で埋めると溝が狭くなってフレットを打ったときに逆反ることがあるので今回は両端と中央にとどめました。
他はフレット溝のきわに接着剤をさすくらいにしておきます。 こういう微妙な判断は経験によるものなので、なぜそうなのかなんとも説明ができません。
埋めたところはこんな感じになります。
指板を研磨していきます。 といっても、指板の薄いラウンド指板のビンテージギターなので指板はほぼ削れません。 接着剤が十分に落ちたところまでで完了です。
指板に十分な厚みがあれば指板の研磨で細かい波打をそろえたいところのですが今回はフレットのすり合わせでもそこを吸収した方が良さそうです。 このあたりも作業する人の経験と裁量によります。 力業やゼネラルセオリーみたいなものはあまり通用しません。
研磨がすんだところです。 最初の状態と比べてずいぶんきれいな溝になったことが分かるでしょうか?
フレットの溝の深さをノコで調整していきます。 今回打つフレットは1.5ミリほどタングがあります。余裕を見て1.7~1.8ミリくらいにします。 隙間があくと埋めなくてはなりませんが、全く余裕がないとフレットが押し上げられてしまいます。
指板が薄いのでこれで限界です。 タングをグラインダーで削るという方法もありますが、次の工程でフレットのRを調整しづらくなるので今回はこの工程で精度のある仕事をすることで解決します。
ジェスカーフレットは多分9.5インチで曲げてあるのでフェンダーの7.25インチ指板にはそのままでは合いません。 自力で合わせる必要があります。 曲げる前がこちら。
合わせたところがこちら。これくらいまでは合わせたいです。
フレットはできる限り圧入機で圧入するようにしています。 「フレットを打つ」と言いますが実際はRのあったアタッチメントで押し込みます。
実は押し込んでいる工程はあっという間に終わります。 溝やフレットのR修正などの準備にどれだけ時間をかけて正確な仕事ができるかでほとんどの結果は決まります。
フレットを打って、すり合わせを終えて仕上げました。
フレット交換の工程はこんな感じです。 ケースバイケースのことも多いのでフレットの交換はとても奥が深いです。