タップボリューム(=ダーボブレンダー)ポットの研究

タップボリュームにハイパスコンデンサを追加することはできないのか、というお客さまの提案について実際に実験しました。

ハイパスを付けるためにはポットの3つの端子を使ったボリューム的な配線にする必要があります。 しかしAカーブではテーパーが合わず変化が気に入らないのでスムーステーパー抵抗RとハイパスコンデンサCを付けることにしました↓

スムーステーパー抵抗やハイパスコンデンサ

半固定抵抗でいろいろ試してみたのですが、テーパーが気持ちいいところで計測すると12kΩとかしかないのです。 20kΩを越えると気持ち悪くなります。 12kΩとボリュームの2~3番端子間の抵抗を並列合成したものに対してハイパスコンデンサを付けても、抵抗値が小さくて聴感上効いているようにはなりませんでした(ちなみに上図の矢印を描き込んだところで抵抗体をカットする、いわゆるフルアップ加工をしたブレンダーの場合は3.3kΩ~4.7kΩくらいでテーパーが一番合うように感じました)。

それもそのはずで下図のような可変抵抗としての使い方に戻ってきてしまうのです。 これは非常に簡単な回路ですし、シングルからハムまでの音量と音質の変化の繋がりが良いです。 ただ、今回分かったのは2番と3番の間に数kΩ~10数kΩの抵抗を取り付けてボリュームとして使う方が変化が偏らなくて良いということです。

比較すると、可変抵抗型のブレンダーポットはシングル側でやや多めに変化しているように聞こえました。6~9でも変化が感じ取れるように全体に拡がりました。

結局戻ってくる

ということでBカーブの場合を調べました。 10年くらい前に1軸2連のBカーブを使ったフルアップブレンダーポットを考案したのですが、今になって気になるのはブレンダーを効かせ始めた辺り(シングルから少し動かした辺り)で一度音量が下がるように聞こえる点です。 下のコイルの音量が上がってくる前に、抵抗体が上のコイルの妨げになるという動きをしているように感じます。

Bカーブはテーパーに問題がある気がする

ハイパスコンデンサCに0.01μFくらいの比較的大きな値の物を使うと音量や音色の繋がりが良くなることが分かりました。 ですが、これはBカーブのブレンダーの短所を改善しただけで、お客さんの言うタップボリュームにハイパスコンデンサを付けることはできるのか、という問題を解決はしていません。

おそらくタップボリュームにハイパスコンデンサを付けてしっかり効かせることはむずかしいのではないでしょうか? ただ今付いている可変抵抗型のフルアップタップボリュームポットに抵抗を並列に入れるとさらにテーパーをきれいにできることがわかりましたし、気持ちではありますがハイパスコンを取り付けておくということはできますね。 結果的にテーパーを改善したら気持ちよくなる気がします。

自分のギターには3.3kΩを付けて組み直したました。 もう少し大きくても良い気がします。・・・4.7kΩか・・・。

3.3kΩを入れたフルアップブレンダーポット

ピックガードのエッジが立っているので外したついでに削りました。

エッジが立っている

エッジを尖らせると格好良くなりますね。

エッジを尖らせた


S-S-Hブレンダー(H-S-Hブレンダー兼用)の研究

3シングルのストラトのミドルピックアップの音を、リアピックアップに直列に混ぜることができるS-S-Hブレンダーを作っています。 フロントピックアップに効かせることもできるのでH-S-Hブレンダーにもなります。 今まで何人かのストラトに登載しましたが好評です。

ハーフトーン時にブレンダーが干渉して意味不明な動きをしないように4回路5接点のスーパースイッチを利用しています。 スーパースイッチは切り替わるときに接点がオープンになるので、ものすごく絶妙な位置に止まってしまったら無音になるリスクもあるので、ライブよりはレコーディングやセッション向きかもしれません。

H-S-Hブレンダー

シングルコイルを直列につなぐブレンダーは、電気的構造としてはハムバッカーのタップボリュームと全く同じです。 ですので、お客さんのレスポールを改造する前に自分のギターでもう少しタップボリュームを研究することにしました。

H-S-Hブレンダーの研究

Aカーブ250kΩ、フルアップ加工したAカーブ250kΩ、Bカーブ250k、スムーステーパー抵抗(実験では半固定を利用)、ハイパスコンデンサなどを組み合わせて試しました。

部品を交換してみる


タップボリュームを考える

ハムバッカーの片方のコイルの音量を操作して、タップ(シングルコイル)からハム(直列のダブルコイル)までコントロールするタップボリュームについて考えました。

ふたつのコイルの間からタップ線を出して、可変抵抗をアースにつなぐという方法があります。 3番の手前で炭素皮膜抵抗をカットしておけば、フルにしたときに可変抵抗が無限大Ωになって完全なハムになります。

ゼロにしたときはアース側のコイルがショートすることになります。 ちなみにショートしたコイルがそばにあると、電磁誘導でつながったもうひとつのコイルに悪さをするという説があるので、このつなぎ方を嫌がるリペアマンもいるかも知れませんが、シンプルなこととテーパーがきれいなこと、あと使わないトーンポットをそのまま流用できることがこの回路の利点だと思いますね。

フルアップタップボリューム

タップボリュームはおそらく、シールドケーブルの容量成分とピックアップ自身のコイル成分が作るLCローパスフィルタのダンピングファクタになっているので、ゼロとフルの時はピークが立っていて、それ以外の位置ではピークがないのではないかと思います。

タップでもシリーズでもない中途半端なところでの高域を多めに再生しようとすると、ハイパスコンデンサを追加するためにボリューム型が必要になります。

スムーステーパー抵抗とキャパシタを追加して、さらにフルにしたときに無限大Ωになって無視できるように抵抗体をカットすると・・・

フルアップタップボリューム

パッと見た感じではちょっと意味が分からないですけど、理屈の上ではおそらくこれでいけそうです。

フルアップ・スムーステーパー・ハイパス・タップボリュームという、中二病アイテムの提案でした。


非安定型トランス式アダプターについて

お客さまから「一部のエフェクターに『トランス式アダプターをつながないで下さい』と書かれたものがあるのはなぜですか?」というご質問をいただきました。 コラムとして、とてもいいテーマだなと思ったのでここにも書き残しておきます。

そのエフェクターについてはハッキリとしたことはメーカーに聞いてみないともちろん分からないのですが、私にはトランス式アダプターの特性に関係があるように思います。

マルツという電子部品屋さんのこのページを見てみて下さい。

グラフ1にあるように、安定化回路を省略した一番単純な構造のトランス式アダプターの場合、定格電流量を取り出したときに定格電圧になるように設計されていています。

つまり何も機材をつながないときには表示より電圧が高く、機材が電流を必要としたときに電圧が下がってくるというような変化があるのです。 例えば9Vと書いてあるのに15V出ていたとかそういうことが起こりうるわけです。

トランス式アダプターでも安定化回路(トランジスタで組むにしろ、完成品のレギュレーターICを使うにしろ、何かしら半導体を使います。)を内蔵した物であれば、機材の消費電流がアダプターの定格以下に収まっていさえすれば電圧は変わりません。 (余談ですが、定格以上の電流を取り出そうとするとグラフ3のようにレギュレータICの保護回路が働いて一時的に供給が止まると思います。 非安定化の単純なアダプターは熱ヒューズが燃えて終わりのような気がします。)

トランスが非安定化型であっても、パワーサプライが素通しのたこ足配線構造になっているのではなく、安定化回路を組み込んだ構造になっていれば、これも出力電圧が変化しません。

 

写真は私が作ったパワーサプライです。

パワーサプライ

赤矢印のインプットは非安定化型の12V(実際は無負荷時15Vくらい出る)ですが、オレンジの回路で9.8Vに安定化されますので、水色の出力は何をつないでも9.8Vで動きません。

サイトを見たところ話題に上がったオプティカルコンプは消費電流が約230mAと結構多めでした。 おそらく光学素子でゲインをコントロールするためにLEDかなにかを付けたり消したりするのにも電流をたくさん使っていると思われます。

ですので警告の理由としては、アダプターの電圧が高くて内部の部品が壊れることがリスクなのか、電流を取り出したときに電源電圧が下がってしまうことによる誤作動や効き方の変化が問題なのか、両方考えられます。

おそらく両方問題なんでしょうね。内部でプラスマイナス15Vに昇圧しているようなので、もしこれを越えるとオペアンプがそろそろ壊れる値ですし、コンプは効き方が命なのに、電源電圧の変化のせいで効き過ぎたり歪んだりしてはもともこもありません。 こだわるならこのコンプだけ電源を専用にしても良いくらいかもしれません。

もしメーカーに確認の問い合わせをするなら「私の使用している電源は非安定化トランス式アダプターを使用していますが、パワーサプライには安定化回路が付いています。 エフェクター全ての総消費電流も問題ありません。 この場合は非安定化トランス式アダプターを使用しても問題ないという理解で良いでしょうか?」みたいな訪ね方をするのが良いかもしれませんね。

先日の寒波のように、電力供給が不安定になってコンセントに来ている電圧が100Vからジリジリ下がる時には、単純な構造の非安定型トランス式アダプターはそれに比例して出力も低下することになります。

 


ナット溝の高さとハイポジションのビリつき

ナット溝が高いと、12フレット上での弦高を調整したときにサドルの高さが低くなるので、結果的にハイポジションがビリつくという相関関係ってあるかもしれませんね。

ナット溝とハイポジション

適正なナット溝の高さから比べて、極端に高い場合は、ナットから遠く離れたハイフレット側に影響が出ている可能性があります。