ベーシストのお客さまが、コードストロークの録音用にテレキャスターが欲しくなったそうです。 フェンダーメキシコ製のネックをこのボディに取り付けて1本の楽器に組み上げて欲しいとのこと。
急ぎではないそうなので作業はしばらく待機になりますが、ネックが取り付けられないとギターケースにボディとネックを入れられないので、待機している間に導電塗料だけ塗っておきます。
ネジが緩いところだけ記録しておきましょう。 ここは埋め直します。
キャビティの掃除をして1回目の導電塗料塗布です。
スタックコイルでハムノイズをキャンセルしているはずのピックアップなのに、ジーとかシーとかいう高域のノイズが残ります。 ボディに導電塗料を塗布したストラトのシングルと同じくらい高域ノイズが残ります。
現代はUSBで充電するものや、LED電球などにスイッチング電源回路がたくさん使われていますので、50Hz低音ハムノイズよりも高域のノイズが飛び交っています。
これらのノイズが消えていないのです。 原因はスタックであることそのものにもあるような気がします。
コイル正面からノイズが入ってくるときに同じ平面に登載されているふたつのコイルでハムキャンセルするのと違って、位相差が出てしまうのではないでしょうか。 厚み方向に距離があるふたつのコイルなので、高域ほど位相差が無視できなくなり、完全に逆相にならない部分が残るのではないでしょうか?
ふたつのコイルの間にスペーサーが入っていましたが、コイル間のストレーキャパシティでキャンセルする前に合流してしまったり、思わぬLCフィルターが形成されて共振周波数でノイズがかえって強調されるのを防いでいるのではないでしょうか。
なんとなく内部構造が分かってきました。
現状は、フロントとリアで全く同じ構造になっているので残留高域ノイズどうしがキャンセルされませんが、リアをさらに逆巻き逆磁極にすれば、ミックス時に通常のジャズベースのようにキャンセルされるようになるのではないかと思われます。
試しに、リアピックアップを裏返してみます。
これだけでミックス時のノイズがかなり減りました。
内部構造が完全に理解できたわけではないのでリスクがありますが、着磁し直して磁極を逆にして、インアウトの線を入れ替えて、ポールピースのアースも逆につなげばノイズが一番小さくなるのではないでしょうか。
フリーダムのストラトタイプです。
レリック加工をどこかの工房に頼んだらロゴがなくなっちゃったみたいです。 レリック加工は上手ですね。
トレモロスプリングとイモネジを交換します。 イモネジのレリックもして欲しいとのことなのですが、サビて動かなくならないように塗料を使ったネジ頭の汚しくらいのレリック加工にしようかと思います。
スプリングは4本掛けで1弦側だけ1本斜めにするそうです。 興味深いこだわりです。
指板サイドが丸いので、ナットが少し出っ張って感じます。 端だけ丸め直します。
わずかですが指板が痩せてフレットが出ています。 バリ取りしましょう。
最近弦高が上がってきたそうですから、ネックコンディションを見て、フローティング量を適正にしましょう。 トレモロが上がってきている気がするそうです。
ピックアップを戻していきます。
各ピックアップからくるコールド線が2本、隣の基板のグラウンドとつなぐ青い線が1本、基板をコントロールプレートにつなぐ緑の単線が1本。 合計4本がつながるのに穴が3個しかありません。 元はコールドどうしをよってまとめてから差し込んでありました。 元のものよりしっかりした出力線に交換したので同じことはしたくないです。
基板のシグナルグラウンドを、基板ごとにフレームグラウンドにつなぐ意味ってなんでしょうか。 どちらかというとリターンの電流が流れるシグナルグラウンドは電流の流れに沿ってつなぐなり、1点にまとめるなりして、フレームとは1カ所でつなぐ方がいいはずです。
伝統的に、ギターやベースは1点アースになってはいませんから、必ずしもフレームグラウンドと1点で接するようにつなぐ必要があるわけではないですが、逆にわざわざ増やす必要も無い気がします。
と思いながら線をピンセットで引っ張ったら、ロックワッシャーからハンダがポロッと取れたので、このままこの線は削除して他のアース関係の線を優先してつなぐことにしました。
部品を戻して音出ししてみます。 それぞれのピックアップ内でふたつのコイルがノイズを打ち消すせいか、不思議な音域に残留ノイズが聞こえますが、まあまあ常識的な範囲に収まったと思います。
海外のフォーラムに「Fender Jazz Bass N3 Noiseless – NOISE!!!」というスレッドがありましたから、もしかしたら初期不良もあるのかも知れません。 これ以上なにかするなら他のピックアップに交換した方が良いです。
弦から手を離しているときと、弦に触っているときで同じくらいになるところまでは減っています。 ポールピースを触ったときにシールドケーブルを引き抜いた時みたいなノイズがでることもありません。 これで弾いてみてもらいましょう。
緩んでいたペグブッシュナットを締め直しました。
これでできそうなノイズ処理は完了です。
ノイズのことばかり考えていたので、20年前くらいに読んだノイズ関係の本を引っ張り出してきました。
これらの書籍の大切なメッセージは・・・
「アース記号に流れ込んだ電流は、他のどこかのアース記号から湧いて出てくるはずなので、回路図は電圧だけに注目せずに電流の流れも考えましょう」とか
「回路図には存在しないはずの部品が現実の回路には発生してしまうことを見逃さずに対処しましょう」ということです。
まさに今回の修理はこれらの考え方が活きました。