分解して原因を究明する【音が出なくなったMUSICMAN Sterlingの修理-1】

急に音が出なくなったというスターリンです。

スターリン

まずパッと見てバッテリーボックスの+極が錆びています。 おそらく液漏れしたのだと思います。

錆びている

バッテリーボックスを外すにはジャックの配線を外す必要があります。 その配線が巻き付いていて動かせないので、プリアンプ基板を外します。

基板

気になったのがこの針金です。 裏蓋をアース電位につなぐためにバネみたいにしてある裸線ですが、これがどこかホットに接触したら音が出なくなります。

基板の下に入っていたので、この線がプリアンプにショートして電池が過熱→液漏れが起こった可能性もあります。

裏蓋のアース線が遊んでいる

裏蓋の絶縁テープはレバースイッチとアルミシートがショートしないようにするためのものですね。

絶縁テープはレバースイッチのため

プリアンプの入力部分です。 ピックアップから出ている4芯の線がつながれています。

ピックアップの線

プリアンプの出力部分です↓ 左側の白が出力線。 中央の赤がバッテリーの9V。 右側の黒が基板のアース線です。

基板の出力部

ジャックの赤い線が見えました。 ジャックを抜くと9Vの線が基板から分離されるようになっています。

ジャックの電源部

この2カ所です↓ 中央がバッテリーに、下が基板につながっているようです。

スイッチになっている

全てのアース線がジャックにつながっています。

アース線

バッテリースナップをジャックにつないでみたら一瞬音が出ました。 やはり主な原因はバッテリーの液漏れによるバッテリーボックスの劣化です。

一応音は出た

省電力は0.7mAで安定しています。 基板はおそらく無事なのだと思います。

消費電力は安定している

いちばん外側のツマミを回すと音が出ました。 何度か回していると出たり出なかったり。 そのうちずっと音が出っぱなしになりました。 おそらく電池ボックスに近いのでガスを浴びて中が汚れているのではないでしょうか?

このツマミを動かすと不安定

基板を取り外しました。

基板を外した

赤いまるのところが汚れています↓

汚れ

中央の輪っかの部分も酸化しています↓

ここが錆びている

この基板がどうなっているのか詳しくは知りませんが、おそらくBAXと呼ばれるイコライザーです。 このツマミはBASSツマミではないでしょうか。 BAXのBASSって唯一コンデンサを介さずに反転入力端子(ー)に入るのですが、非反転入力端子(+)がBIAS電位(たいていは乾電池の9Vの半分、4.5V)につながっていて、イマジナリーショートで反転入力にも4.5Vが自動的に来ているはずです。

ここが接触不良になると出力の直流電位の情報が帰還されなくなって、入力の4.5Vとの比較ができなくなるせいかBAXが正常に動かなくなります。 これたぶんBAXあるあるなのではないでしょうか。

BAXのBASS部分

液漏れのガスのせいなのか、経年変化によるものかははっきり分かりません。 オペアンプの出力電位がふらふらとドリフトすると、バランスを取るためにこの接点にわずかな直流が流れるのだと思うのですが、接点のアーク放電とかで空気中から炭素を引きよせてたまったり、窒素を引きよせて硝酸ができたりするのではないでしょうか。 詳しいことは難しくて分かりません。

きれいに掃除しました。

さびを清掃した

元に戻しました↓

元に戻す

気になっていた裏蓋のアース線は・・・

裏蓋のアース線

銅箔テープに変えました。 裏蓋のネジを締めればアース電位につながります。

裏蓋のアース

これでバッテリーボックスを新品のBB-04に交換すればおそらく正常に動くと思います。


配線作業【Sonicストラトタイプのメンテナンス-4】

配線作業を進めます。 トーンの配線が外してありましたが、他の線に接触するとショートして音が出なくなったりしそうなので絶縁チューブを被せておきます。

トーン周りの絶縁

交換するリアピックアップの位相が、フロント側と同じ位相かどうかを調べました。 大丈夫そうです。

位相を確認する

ピックアップが通る穴が狭いので手作業で上下は片側0.5、左右は片側1.0近く拡げました。 ピックアップは試してみてイマイチだったら戻すらしいので、なるべく拡げすぎないようにしています。

ピックガードの穴を拡げる

ボリュームを新しいものに交換してスイッチ周りの配線をしていきます。 4芯で出ているハムバッカーの出力を、熱収縮チューブでまとめておきました。

ピックアップ周りの配線

ボリュームの終端抵抗は1Ωと低いです。 歪ませるとボリュームを絞っても音が漏れるボリュームは、ここが数十Ωくらいあります。 これなら交換した価値がありそうです。

ボリュームは0になりそう

ボディ側の線をつないでいきます。 アース周りが1本と、ジャックに向かう出力線が2本です。

ボディ側とつなぐ

配線が完了しました。

配線が完成

弦を張っていきましょう。 古い弦は調整中に1弦が切れたので、ギターと一緒にお預かりした新しい弦を張っておきます。

弦を張りかえる

リアピックアップの音量が結構大きいので、フロントとの音量バランスを考えて低めにしておきます。 もしかしたら音量差があった方が良いのかもしれませんが、そういう使い方をする場合は上げて使ってもらいましょう。

リアピックアップの音が大きい

ネック調整、弦高調整、オクターブチューニング、ジャックの清掃などをしました。

調整が完了

これで問題ないように思います。


フレットの仕上げ【Sonicストラトタイプのメンテナンス-3】

フレットのすり合わせを続けます。 弦を張っていない状態ですり合わせをして、一旦フレットを大まかに丸めました。

続いて、弦を張った状態で、実際にギターを弾くときと同じ角度に持ってみて、フレットの頂点が真っ直ぐ並んでいるかを確認しながら擦り板をあてて確認程度に擦りました。

フレットのすり合わせ

フレットをピカピカに仕上げました。

フレットを磨いた

ナットの形はこういう感じでしたが・・・

ナット部

角を丸めてSonicっぽくしました。

ナットを仕上げ直した

FV-12が届きました。

フルアップボリューム

配線に進みましょう。


チェック【Tokai LoveRock(20240908お預かり)のブリッジ交換-1】

Tokaiのレスポールスペシャルタイプのギターです。

トーカイ LoveRock

いつものようにブリッジを交換します。

モントルー製バダスブリッジ

サドルはブリッジ本体にピッタリ付いています。 ネジ穴の位置や大きさが修正されてシーソーみたいにガタガタしない仕様になっています。 今はもうこの仕様に変更されたあとの在庫が流通しているようですね。

サドルはフィットしている

オクターブ調整のための山があるタイプのブリッジが付いていますが、バーブリッジ自体も斜めに付いているので、アンカーはセンターから6弦側に意図的にずらして打ってあります。 ということは、ヒスコレなどのシンプルなバーブリッジが付いているギター同様に、サドルの弦溝は1弦側にずれた位置に来そうですね。

少しスラントしている

トラスロッドナットを清掃してグリスを塗っておきます。 パイプレンチで4回くらい回すとネックが真っ直ぐになります。 ちょっと手応えが固くなります。 欲を言えばロッドがフリーの状態でもう少し真っ直ぐに近いと良いですね。

ロッドナットのグリスアップ

ジャックが少しだけファサファサいいます。 掃除してみました。

ジャックの清掃

このギターにはミリスペックのアンカーが打たれていますから、ミリスタッドを別途購入する必要があります。

スタッド

本体と同じクロームで注文しておきました。


フレットの修正【Sonicストラトタイプのメンテナンス-2】

ロッドナットにグリスを塗っておきます。 トラスロッドは完全に緩んでいました。 少し締めるだけで真っ直ぐになりそうです。

ロッドナットのグリスアップ

ピックガードを外してみました。

ピックガードアッセンブリー

トーンは配線が外されていてダミーになっています。 線が宙に浮いているので絶縁しておこうと思います。

トーンがダミーになっている

フレットが浮いているところがあります。

フレットが浮いている

印を付けてみました。 中央から2フレット辺りが浮いているようです。

浮いているところ

特にここが大きく浮いています。 これがビリ付きの原因のようです。 最初に楽器を拝見した瞬間、手垢のたまり方が他と違うのですぐに気が付きました。

いちばん浮いているところ

ハンマーでたたき延べようとしてみたり、圧入器で抑えてみました。 抑えながらでも紙を出し入れできます。 これはつまりフレット溝が浅くてフレットのタングが入りきっていないということです。

フレットが入らない

指板の厚みを考慮してぎりぎりのフレット溝にしてリフレットした結果、入りきれなかったフレットが浮いてきたということのようです。 これを本格的に直すならもう一回フレットを抜いてリフレットをやり直すしかありません。 指板をこれ以上削りたくないということですので、この浮きは直さないことにします。

フレットを仮固定する

フレットのサイドが手に当たって痛いということなので整えます。 タングは指板とそろっているのですが、クラウンが指板のエッジよりわずかに外に出ていました。

サイドの処理

また、クラウンの角が尖っているのが手に当たっていたので丸め直しました。

フレットの端を丸める

フレットが凸凹しているところがあるので、すり合わせをやり直します。 擦り板が当たらない所があります。 ここがビリついていたところだと思います。

擦り板が当たらない