ベースの4弦解放が鳴らない理由のひとつ

いろいろなベースを弾いてみると、4弦解放の音が「ドーン」とこずに「パリョ~ン」といった音が混じるように鳴るときがありませんか? ずっとこれが謎だったのです。

この写真のベースは修理完了時にオクターブ調整をしっかりやり直すと音が変わってしまいました。 「パハーロロリョリョロロリョリョン」とフランジャーがかかったような鳴り方をしてしまいます。

オクターブ調整前の状態に戻すと良くなります。 どうやらサドルの位置がボディエンド側に寄ってしまっていることが問題のようです。 角度がつきすぎて弦が曲がりきれていないことが原因か、ボールエンド近くの巻きが乱れている部分を振動させているからか。

4弦のサドルが下がりすぎている

この問題の原因について飲み会の場でF弦カスタムハウスのH原くんに話したらあっさりと「あれでしょ。サドルが下がりすぎて弦の角度がつきすぎているんでしょ。フェンダー系のベースは全部それあるよね。 アルバトロスのブリッジだったらその症状が出ないでしょ」というのです。

アルバトロスのブリッジはタイミング良く、お預かりしている楽器から外したものがあります。3・4弦の弦留め部分が下がっている構造のブリッジです。 並べてみました。

ブリッジを並べてみる

3・4弦のボールエンドをかなり緩い角度で長めに後から引っ張ることができます。

ブリッジを載せてみた

これまでそんなに注目していなかったブリッジですが、これってものすごい大発明なのでは?と思えてきました。

アルバトロスのブリッジ

作ったアルバトロスの水口さんに電話して聞いてみたら、もともとは5弦の飾り糸がサドルに乗り上げないように、というところから発想したらしいのですが、付けてみると3・4弦の解放がドーンと鳴るように変化するということです。

解放はナット側でも弦を強く曲げることになるので、特に解放で弦の振動がおかしくなるのでしょう。

「曲げられていることでサドルやナットより内側の領域まで振動しにくくなる」説、「弦の断面積が増えて物理学上の理想的な弦からかけ離れる」説、「弦が曲がりきれずに、インコースとアウトコースで弦長が異なり微妙に違う周期で振動してしまう」説などが考えられますかね。

ビンテージのベースの場合、取り付け位置がそもそも前になっていて、サドルは全体的に後にずれてしまっています。

ゆえに1・2弦ももう少し遠くから引っ張ってもいいので、ビンテージに付けても違和感がない四角い形状のベースプレートで、なおかつ塗面に接触する面積は同じにすることで、付け外しの際に塗装にダメージが出ないようなものを作りたいですね。

ちなみにこの症状が出たときにテーパードコア弦を使用してみるのもありだと思います。

この研究はまだ続きそうです☆


ジャズベースのボリュームを絞ってもシールドから混入する外来電磁ノイズはゼロにならない件

通常のボリュームの使い方ではピックアップのホット信号が3番端子から入って2番端子から出て行きます。

通常のボリューム配線

ジャズベースに限っては2番端子から入って3番端子から出て行きます。

これについて今回は詳しくは書きませんが、ふたつあるボリュームのどちらかを絞っても反対側の音が出続けるようにするための工夫なのです。 レスポールはその逆で、セレクタースイッチがセンターの状態で、どちらかのボリュームを絞りきると両方のピックアップの音が出なくなってしまいます。

ジャズベのボリューム配線

で、通常のボリュームを絞りきったところがこちら。 吹き出しで描いた雷マークはシールドから入ってくる外来ノイズです。 でもこのノイズはボリュームをゼロにしているときはアースとの間が0Ω(ショート)になっているのでノイズの音量もゼロになります。

ライブ中、曲間のMCでボリュームを絞っておけばアンプからのノイズはほぼ出ず、静かになります。

通常のボリュームを絞ったところ

しかしポットの2番と3番を逆に使う配線の場合、ボリュームを絞っても外来ノイズ信号とアースの間には例えば250kΩのポットを使っていたら250kΩそのまま残ることになります。

ボリュームを絞ってもシールドに入ってきたノイズはアンプで増幅されて鳴り続けることになります。

ジャズベ配線ボリュームを絞ったところ

実際のジャズベ配線ではトーンを含めて3個の250kΩポットが使われていますからアンプの1MΩを含めた4要素の並列合成値がノイズ信号を受け止める入力インピーダンスになると思われます。

実際のジャズベ配線のインピーダンス関係

回路図が読めない人もザックリと「ジャズベースはボリュームを絞ってもシールドケーブルに混入してくる外来電磁ノイズが消えない」とだけ覚えておいて下さい。

ジャズベースのボリュームを絞ってノイズを消したい場合は、良くある2ボリューム方式ではなく、バランサーポットとマスターボリュームにして、マスターの方を通常のボリュームポットの使い方にしておけばマスターを絞ることでノイズを消すことができます。 ただし、並列合成される要素が増えるので少し音が変わる(柔らかくなる方向に)ことが考えられます。

私の古巣のラムトリックカンパニーでsonicブランドから販売している「フルアップボリューム」の場合も考えてみました。 フルアップボリュームも絞るとノーマルポットと同じなので、ボリュームを絞ったときのジャズベース配線の外来ノイズレベルはノーマルポットと同じレベルであると思われます。


ブッシュの浮きについて【コラム】

ペグポストを受けるためにヘッドに打ち込まれている筒状の部品をブッシュといいます。

このブッシュが浮いているギターが結構多いのですが、印象的なギターがあったので写真を載せておきます。

ほぼ全てのペグブッシュが浮いています。

ブッシュが浮いているところ

ブッシュ浮きが生じるプロセスにはいくつかパターンがあると思われます。

まずひとつめが弦の張力でペグポストがブッシュに強くあたることで、ブッシュが浮いてくるパターン。 浮いて斜めになったブッシュとペグポストのあたり方がきつくなってチューニングに影響が出ることがあります。

ブッシュと強く接触していなくても、ペグポストが傾くことでペグ内部ギアのかみ合わせがきつくなって動きがかたくなるなどの問題が生じることがあります。

また、ペグの取り付けネジ穴がずれていることで、ペグポストがブッシュに斜めにあたってブッシュ浮きが起こるパターンもあります。 この場合、そもそもブッシュとポストの当たり具合が良くない上、浮いたブッシュがその問題を複雑にすることもあるようです。

ブッシュとペグポストの摩擦が大きくなると、弦の張力がペグのギアまでしっかりかからなくなるので、ギアの遊び(バックラッシュとも言います)が顕著に感じられるようになり、弦を緩める方向で回したときにチューニングが追従しない違和感が増します。

こういう場合はネジ穴を埋めて取り付けをやり直す必要があります。

ネジ穴を開け直した写真がこちら。 元の穴を埋めた明るい色の木と新しくあけた穴がずれていますね。

ネジ穴を修正

取り付けをやり直しただけでチューニングがしやすくなりました。

ブッシュが浮いたまま使用を続けると、ブッシュとペグポスト双方のメッキがはがれて金属が錆びることで、さらに摩擦が増すという問題も生じます。

あとこれはまだハッキリしたことは分からないのですが、ブッシュ浮きを修正した結果、弦振動が良くなった気がするという感想を頂くことがあります。 どのくらいの寄与度があるのか分かりませんが、そういうことも大いに起こるのが楽器だとも思います。

いつも弾いているギターのブッシュは浮いていませんか?一度チェックしてみて下さい。


ギブソン系3ピックアップ配線の研究【BurnyのSGの配線改造-5】

 

今回のバーニーに登載し直した配線は、調べてみたところ本家ギブソンと同じであるようです。

ではなぜバーニーのギターはこんな変な回路になっているのでしょうか。 その部分の解説です。

まずこちらがバーニー配線のボリュームがフルの状態。

Bと書かれたブリッジピックアップは分圧されずに出力されていますし、Mと書かれたミドルピックアップもグラウンドから500kオームが保たれていますので、ブリッジとミドルのハーフトーンが出ます。

ボリュームがフルの状態

こちらがボリュームゼロの状態。 出力がグラウンドとショートするので音が出ません。

ボリュームがゼロの状態

問題はこの中間部分です。 ボリュームを2くらいまで上げるとミドルとグラウンドの間にそこそこの抵抗値が出てきます。 これによってミドル・ピックアップの音が出力に出てくるようになります。

しかしこのとき、ブリッジ・ピックアップはボリュームによって分圧されていますので少し小さい音量で混じっていることになります。

ボリュームが中間にある状態

つまりスイッチがセンター・ポジションのとき、ブリッジボリュームは「ボリューム」と「ミドルにブリッジを並列で混ぜるバランサー」というふたつの機能を併せ持っていることになります。

0~2ではボリューム。2~10ではバランサーと思って使い分けする回路だったのです。

裏を返すとこれは、トグルスイッチの構造上、ミドル単体を出力することが困難であるということの証明でもあります。 今回そういう配線がないか一生懸命探しましたが、何十年も前にフェルナンデスがやったことの繰り返しであったということになります。

使いやすさで考えれば、今回の改造はとても意味がありますが、かといってフェルナンデスが間違った配線をしているわけではもちろんないということです。

以上ギブソン系3ピックアップ配線バリエーションの研究でした。

 

 

この記事は一度公開したのですが、当時のフェルナンデスの仕様に詳しい人から連絡があったので書き直しました。 本家のギターを写真からコピーしていた関係で、配線は本家と違う機種があるようです。 開発担当者がいろいろと工夫を凝らして作ったのでしょうね。

しかも本家ギブソンのミドル・ピックアップは逆位相で、ミドル&ブリッジはフェイズアウトトーンが出るらしいではないですか(笑) 奥が深いですね。


トグルスイッチの構造はこうなっている【BurnyのSGの配線改造-2】

ギブソンのギターについているトグルスイッチはこんな構造になっています。 ◎になっているところがコモン端子といってスイッチが切り替わるときに根元になる端子です。

()のところはスイッチがそのポジションに切り替わるのですが、そこに何か回路ををつなぐことはできません。

トグルスイッチの構造

実際のレスポールやSGの配線はこうなっています。 Nはネック側ピックアップ。Bがブリッジ側ピックアップです。

コモン端子は出力につながっています。 これはスイッチポジションがセンターの状態です。 両方のピックアップの音が並列に出ます。

レスポールの配線

スイッチをリズム側に倒すと図の左側のスイッチが切り替わります。ブリッジ側ピックアップが切り離されてネック側だけが出ている状態になります。

リズム側に倒したとき

次にトレブル側に倒してみましょう。 今度はネック側のピックアップが切り離されてブリッジ側ピックアップだけが鳴っています。

トレブル側に倒したとき

これが基本的なトグルスイッチの構造です。

それを踏まえて今回の3ピックアップのSGタイプの配線について見ていきましょう。