ブッシュの浮きについて【コラム】

ペグポストを受けるためにヘッドに打ち込まれている筒状の部品をブッシュといいます。

このブッシュが浮いているギターが結構多いのですが、印象的なギターがあったので写真を載せておきます。

ほぼ全てのペグブッシュが浮いています。

ブッシュが浮いているところ

ブッシュ浮きが生じるプロセスにはいくつかパターンがあると思われます。

まずひとつめが弦の張力でペグポストがブッシュに強くあたることで、ブッシュが浮いてくるパターン。 浮いて斜めになったブッシュとペグポストのあたり方がきつくなってチューニングに影響が出ることがあります。

ブッシュと強く接触していなくても、ペグポストが傾くことでペグ内部ギアのかみ合わせがきつくなって動きがかたくなるなどの問題が生じることがあります。

また、ペグの取り付けネジ穴がずれていることで、ペグポストがブッシュに斜めにあたってブッシュ浮きが起こるパターンもあります。 この場合、そもそもブッシュとポストの当たり具合が良くない上、浮いたブッシュがその問題を複雑にすることもあるようです。

ブッシュとペグポストの摩擦が大きくなると、弦の張力がペグのギアまでしっかりかからなくなるので、ギアの遊び(バックラッシュとも言います)が顕著に感じられるようになり、弦を緩める方向で回したときにチューニングが追従しない違和感が増します。

こういう場合はネジ穴を埋めて取り付けをやり直す必要があります。

ネジ穴を開け直した写真がこちら。 元の穴を埋めた明るい色の木と新しくあけた穴がずれていますね。

ネジ穴を修正

取り付けをやり直しただけでチューニングがしやすくなりました。

ブッシュが浮いたまま使用を続けると、ブッシュとペグポスト双方のメッキがはがれて金属が錆びることで、さらに摩擦が増すという問題も生じます。

あとこれはまだハッキリしたことは分からないのですが、ブッシュ浮きを修正した結果、弦振動が良くなった気がするという感想を頂くことがあります。 どのくらいの寄与度があるのか分かりませんが、そういうことも大いに起こるのが楽器だとも思います。

いつも弾いているギターのブッシュは浮いていませんか?一度チェックしてみて下さい。


ギブソン系3ピックアップ配線の研究【BurnyのSGの配線改造-5】

 

今回のバーニーに登載し直した配線は、調べてみたところ本家ギブソンと同じであるようです。

ではなぜバーニーのギターはこんな変な回路になっているのでしょうか。 その部分の解説です。

まずこちらがバーニー配線のボリュームがフルの状態。

Bと書かれたブリッジピックアップは分圧されずに出力されていますし、Mと書かれたミドルピックアップもグラウンドから500kオームが保たれていますので、ブリッジとミドルのハーフトーンが出ます。

ボリュームがフルの状態

こちらがボリュームゼロの状態。 出力がグラウンドとショートするので音が出ません。

ボリュームがゼロの状態

問題はこの中間部分です。 ボリュームを2くらいまで上げるとミドルとグラウンドの間にそこそこの抵抗値が出てきます。 これによってミドル・ピックアップの音が出力に出てくるようになります。

しかしこのとき、ブリッジ・ピックアップはボリュームによって分圧されていますので少し小さい音量で混じっていることになります。

ボリュームが中間にある状態

つまりスイッチがセンター・ポジションのとき、ブリッジボリュームは「ボリューム」と「ミドルにブリッジを並列で混ぜるバランサー」というふたつの機能を併せ持っていることになります。

0~2ではボリューム。2~10ではバランサーと思って使い分けする回路だったのです。

裏を返すとこれは、トグルスイッチの構造上、ミドル単体を出力することが困難であるということの証明でもあります。 今回そういう配線がないか一生懸命探しましたが、何十年も前にフェルナンデスがやったことの繰り返しであったということになります。

使いやすさで考えれば、今回の改造はとても意味がありますが、かといってフェルナンデスが間違った配線をしているわけではもちろんないということです。

以上ギブソン系3ピックアップ配線バリエーションの研究でした。

 

 

この記事は一度公開したのですが、当時のフェルナンデスの仕様に詳しい人から連絡があったので書き直しました。 本家のギターを写真からコピーしていた関係で、配線は本家と違う機種があるようです。 開発担当者がいろいろと工夫を凝らして作ったのでしょうね。

しかも本家ギブソンのミドル・ピックアップは逆位相で、ミドル&ブリッジはフェイズアウトトーンが出るらしいではないですか(笑) 奥が深いですね。


トグルスイッチの構造はこうなっている【BurnyのSGの配線改造-2】

ギブソンのギターについているトグルスイッチはこんな構造になっています。 ◎になっているところがコモン端子といってスイッチが切り替わるときに根元になる端子です。

()のところはスイッチがそのポジションに切り替わるのですが、そこに何か回路ををつなぐことはできません。

トグルスイッチの構造

実際のレスポールやSGの配線はこうなっています。 Nはネック側ピックアップ。Bがブリッジ側ピックアップです。

コモン端子は出力につながっています。 これはスイッチポジションがセンターの状態です。 両方のピックアップの音が並列に出ます。

レスポールの配線

スイッチをリズム側に倒すと図の左側のスイッチが切り替わります。ブリッジ側ピックアップが切り離されてネック側だけが出ている状態になります。

リズム側に倒したとき

次にトレブル側に倒してみましょう。 今度はネック側のピックアップが切り離されてブリッジ側ピックアップだけが鳴っています。

トレブル側に倒したとき

これが基本的なトグルスイッチの構造です。

それを踏まえて今回の3ピックアップのSGタイプの配線について見ていきましょう。

 


mu-tron iiiの修理で分かった☆回路解説と電源の注意点【MU-TRON Ⅲの修理-2】

ミュートロンの回路構成がなんとなく分かったので掲載しておきます。

断線箇所

入力部は反転アンプです。 ここからフィルター部と制御系に分岐します。

入力部

まず制御系からです。 入力信号の振幅をオペアンプを使った理想ダイオード回路で直流に直しているようですね。 その先の4.7μFの電界コンデンサの容量を変えたら充放電の時間が変わってフィルタの反応が変わりそうな気がします。

理想ダイオード

ドライブというスイッチがありますが、これはアナログフォトカプラのLEDをどうドライブするかというスイッチです。

強い入力に対してLEDが点灯するのか、逆に点灯していたものが消えるのか。

正確には分からないのですがオペアンプの反転回路と非反転回路を入れ替えるような仕組みです。 この回路図が合っているのかも分かりませんし大まかな検討だと思って下さい。

LEDをドライブするアンプ

肝心のフィルタ部はステートバリアブルフィルタです。 3個のオペアンプを使用する複雑な回路ですが、カットオフ周波数とゲイン幅とQのパラメータを自由に決めることができます。

パラメトリックイコライザーを動作させるためのバンドパス信号を取り出す回路としてよく使われます。

オペアンプの間に220kオームの抵抗がふたつありますが、ここを変化させることで周波数を変えることができます。 そこにアナログフォトカプラのCDS側をつないであります。 CDSは光が当たると抵抗値が下がる性質があるので、入力の強弱に合わせて制御系がLEDを点灯するとフィルターの周波数が可変することになります。

ステートバリアブルフィルタ

ステートバリアブルフィルターは3カ所から信号を取り出すことができます。 場所によってハイパス、バンドパス、ローパスとなります。 ミュートロンにはこれらを選ぶスイッチが付いています。

出力部

というわけで、エフェクターとしてはかなりの飛び道具ですが、内部の回路は非常にスマートにできています。

最後に電源部です。 このエフェクターはグラウンドを中心にプラス9ボルトとマイナス9ボルトで動いています。

回路図を見ていて気がついたことがあります。

電源部

このエフェクターは電源に問題があります。 電池を入れたままアダプターをつなぐと、電池の両端に電源アダプターの電圧がかかります。 つまり減った電池を充電してしまうのです。

充電式でない電池を充電するのは破損することもあるので危険です。

今回の故障の原因はおそらくこれです。 電池を入れたままアダプターをつなぐ。 電池が液漏れを起こす。 電池から漏れた液が基板面に着く。 基板パターンが腐植して絶縁を起こす。

事故調査委員会のようにトラブルのシナリオが書けてしまいました。 古いミュートロンを使っている人は気をつけて下さいね☆

 


共振とビリつきの原因【レスポールカスタムのメンテナンス-2】

ずっと悩んでいたブリッジ付近の謎の共振のメカニズムが分かってきました。 どうやらサドルのオクターブネジが弦振動に共鳴するようです。

異音がするブリッジ

ギブソン系のブリッジに付いているサドルはよく下図のように傾いています。 これはサドルのネジ穴が下側に誤差が出るように加工されているからです。 上に誤差が出るとそのサドルにはネジが通らず、そのまま廃棄になってしまうからではないでしょうか。

シーソー状態のサドル

サドルがシーソーのように動いてしまいあまり良い状態とは言えないのですが(弦溝切りの作業もしにくいです)、ひとつ利点があるようで、弦の張力がかかったときにオクターブネジを下に押さえ付ける方向に力がかかるので、ネジの共振が抑えられるのです。

精度良く加工されたサドルの場合は下図のようになります。

シーソー状態でないサドル

サドルの両脇がしっかりブリッジに付いていて弦振動を上手くボディまで伝えてくれそうですが、一直線上に並んだネジ穴の中でネジが遊んでしまってカラカラと共振することがあるようです。

ネジの先にグリスやネジどめ剤をさすなどすれば止まることが多いようですよ。 ネジに合ったナットを付けてブリッジの内側からネジを突っ張るという固定方法もあるかもしれません。 ちょっとタイトすぎる気がしますが。 人間と一緒でギターも遊びがあるくらいが良いように思います。

ビスの先にネジとめ剤

2・3・4弦のローポジションでのビリつきは、微妙な逆反りとブリッジの反りだと思われます。 写真のようにストレートをあてると隙間ができます。 1・6弦に合わせてブリッジの位置を決めると中央の弦高がとても低くなってしまうのです。

ブリッジが反っている

弦を張るとこの反りはさらに大きくなります。 元の状態に戻る方向に力をかけるしかないのですが、同業者によるとその方法をギタークラフト科の生徒に教えている最中に折れたそうなのでリスクの伴う作業であることは確かでしょう。 お客さまと相談しながら直します。