これは数年前に、とある仲の良いお客さんがオークションで手に入れたというネックです。 あまりにも状態が悪いので所有権を放棄して帰られましたので、それからずっとうちにあります。
指板の表面がバッキリと割れています。 ネック材が柔らかくてトラスロッドナットがめり込んでいった結果、押しつぶされた木部が指板を持ち上げて割れるのです。
反った分を指板を削ることで無理やり修正しようとすると指板が薄くなって強度がなくなり、さらに割れやすくなります。
ネック裏はこんな感じ。 スカンクストライプがないので、トラスロッドは表側から仕込まれています。
メイプルにメイプルが張られているので、境目がパッと見ただけでは、よくわかりません。
バインディングのラインがぼやけているので、指板を削ったあとに貼り直したような気配がありますね。
ヒールはこんな感じ。 ネジ穴もダメになっていそうです。
トラスロッドがめり込んだ分、スペーサーが入っています。 これがまたさらに木部をつぶしていくのでしょう。
こういうネックにはベンドロッドは向きません。 潰れて、反って、締めてを繰り返していつかは割れるだけでしょう。 2ウェイロッドとかチャンネルロッドといった構造のものに交換すれば何とかなるかも知れませんね。
どうなっているのか知りたくて、研究のためにバラします。 まずはフレットを抜きました。
1フレットのブロックポジションマークを外しました。 ここも埋木の横が割れていますね。 そもそもこれはベンドロッドなのかどうかもよく分かりませんね。 ロッドのストッパー部分が出てくるのかと思ったのですが埋木は真っ直ぐです。
エンド側もマークを外しました。 埋木周辺から割れています。
バインディングを外した結果、指板は1弦側が多めに削られていることが分かってきました。
サイドポジションマークの位置が変わっていますね。 上のマークの中央が指板の貼り付け層です。
ナット付近の指板の貼り付けはこういうラインです。
これ、一度指板を剥がしてみたいですね。
こういう「ロッドトラブルでたたき売られてしまっているかわいそうなネック」たちをまた使えるようにできないものでしょうか。 ロッド入れ替えを練習するのもいいかもしれませんね。
木が柔らかいのは強度面で問題ですが、もうこれ以上地球の木を切れないようになってきていますし(ローズ材もきびしいですよね)、あるものを大事に使ってみるのも良いかもしれないという気持ちになってきているのです。
学生時代を共にしたグレコとかフェルナンデスとかも、復活させてまたガンガン鳴らしてほしいと思っているので、修理受け付けを再開したら押し入れから出してオーバーホールに持ってきて下さい。