0.03mmという小さくて大きな差!【フェンダーメキシコJBの修理-2】

ハイポジションが起きてきがちなネックですがヒーターはよく効きます。 弦を張ってみてもなかなか良い感じです。 問題はこれをどうやって維持しようかというところです。 今回は新しいアイデアを試していきます。

ヒーターはOK

まずはフレットを抜きました。

フレットを抜く

フレットを抜く時に軽くスチームをあてて木を柔らかくしますが、それでも少し指板面が持ち上がります。それをまたスチームをあてながらおさえつつ、低粘度の接着剤で固定します。

起きた指板面をおさえる

テフロン製で0.5ミリ厚の薄板を差し込んでフレットの溝を一端埋めていきます。

フレット溝を埋める

これはフレットの溝が度重なるフレット交換で緩くなってしまったときにする工程ですが、今回はあえてこの工程をはさみます。

溝はこんな感じ

フレットの溝を整えるノコにはいろいろな厚みのものがあります。

2種類のノコ

こちらは0.56ミリ。

0.56ミリ厚

こちらは0.53ミリ。実測ではもう少し細く出ますね。

0.53ミリ厚

フレット溝を埋めると0.56ミリで溝を仕上げてもフレットの厚みで少しネックが逆反り方向に動きます(厳密にはスタッドの厚みで)。 おそらく0.53ミリだともっとでしょう。 ローポジションは少し逆反らせるくらい、ハイポジションはもっと逆反らせる。そういう状態を狙ってふたつのノコを使い分けようという作戦です。

ノコを使い分ける

ジェスカーのフレットは24本入りです。 このベースは20フレット仕様です。 製作中のWife風レリックベース用に仕入れていたフレットがありますが、3本しか使わないので残りの(?)21本を使いましょう。

フレットを分ける

ジェスカーフレットは曲がり具合がとてもきれいです。少し追加で曲げ加工を施すとすぐこのくらいのフィット感に持っていけます。指板のRに合わせて押し込むことで後々バネのようにフレットが浮いてくることを避けるようにしています。

ジェスカーの精度

指板修正時に指板のRをきっちり作っておくこと前提ですが、ジェスカーならこれくらい光がもれないように加工できます。

フレットを打ってみたところが写真です。

フレットの圧入

とりあえず今のところ良い反り方をしていますよ。 フレットがハイポジションを維持してくれますように。

 


ジャズベースの直列(シリーズ)or並列(パラレル)配線のバリエーションについて

スイッチポットを利用したジャズベースのシリパラ配線にはこれと・・・

ジャズベのシリーズ・パラレル配線その1

これがあります。

ジャズベのシリーズ・パラレル配線その2

上の配線パターンはSonicのターボJベースに採用されているものです。 ラムトリック時代にたくさん製作しました。

今回FUJIGENのJBタイプを分解していて気がついたのですが、以下のような配線が採用されていました。

FUJIGENのシリーズパラレル配線

そういえば確かにこれでも動きますね。 今まで全く気がつきませんでした。 なぜ今までこの配線と出会わなかったのでしょうか。

考えていて分かったのですが下の配線は、ひとつ上の配線とほぼほぼ同じで、斜めにショートカットせずにスイッチの接点をひとつ多く経由しています。

考えられるデメリットは・・・

「スイッチ故障のリスクが無駄に増える」

「スイッチポットは多くの場合オープン方式なので切り替え時に音が一瞬途切れるが、スイッチが多く挟まることでよりながく信号が途切れる方の影響を受ける」

などがありそうです。

一方メリットはスイッチのハンダ付け端子の穴を広げたり端子の向きを斜めにしたり、さらにはジャンパー線の絶縁をする手間なく手早く作業が可能であることでしょう。

たいしたデメリットでもないですし、この配線を選ぶのも作業の1秒1秒を削り出す努力の賜と言って良いでしょう。 こうやって価格と品質の両立をうまく両立した楽器をユーザーに届けているのだなあと感心した話でした。 このベースは勉強になることが多かったです。 小さな修理工房では考えないような工場ならではのアイデアにとてもドキドキしました。

 

 


PBピックアップのねじ穴の開け方

PBピックアップ取り付けついてです。 先日の加工ではこんなふうに斜めにねじ穴をあけました。

ネジ穴を開ける

意図としてはナベネジの底がカバーにまっすぐフィットするようにということなのですが、考えてみれば、ピックアップをどんどん高くしていくとピックアップはセンターから外へ移動していくことになります。

斜めにあけたとき

自分で出したセンターを否定するようで精神衛生上よくないです。

また楽器のオーナー様の好みなどで、音量の調整のために極端に傾けようとした場合、ネジが斜めになっている方が極端な旋回をしてカバーの外側が、ピックガードに干渉しそうです。

旋回軌道

そういう意味ではやはり通常通りの垂直ねじ穴がやはり良いのかもしれません。

真っ直ぐにあけたとき

ラムトリック時代にSonicセミナーでさんざんドヤ顔で言っていたことと考えが違ってきてしまいました。 静的に見れば良くても調整する工程を動的にとらえるとイマイチといったところですかね。

ネジ穴の位置決め

このベースに関しては良い位置で収まっているのこのままで問題ないですが、今後はこの方法は採用しないかもしれません。 ちょっとしたことですが考え出すと奥が深いですねえ。

 

 


custom wrap around bridgeの取り付け方法【レスポールスペシャルの改造-6】

モントルー製のバダス型ブリッジを装着していきます。 本家より厚みが薄く弦高が下がりやすくて良いです。

モントルー製バダス型ブリッジ

本家は鋳型が壊れたのか製造中止になっていますね。 ですので今から交換する人はこれがオススメです→モントルーサイトの商品ページはこちら

おおよそのブリッジ取り付け位置をスケールから導き出します。

おおよその取り付け位置を出す

このブリッジは、サドルに溝が付いていないので取り付け時に加工が必要です。 さらに難しいことに、絶対と言っていいほどサドルの中央に溝が来ません。

もし仮にサドルの中央を弦が通ると・・・

もし弦を中央にすると

指板上ではこんな感じに弦が左にずれてしまいます。

弦が左による

これは、もともと付いているバーブリッジが、オクターブ・チューニングのために斜めに付いていることに由来します。

斜めに付いているブリッジを下から回り込んで弦が出てくるとき、写真で言う右方向に弦がずれて出てきてしまうのです。それを微調整するために、レスポール・スペシャルのブリッジ・アンカーはあえてずらした位置に打ち込まれているのです。

そのため、バダス型ブリッジに交換したとき、そのずらした分だけサドルの中央から外れたところを弦が通ってしまうのです。

例えばこのくらいずらした位置にすると・・・

実際の溝切り位置

このように左右均等になります。

弦が左右均等に通る

実際には、ネック側、ブリッジ側のピックアップの1弦と6弦ポールピースの位置を考慮して、サドルのピッチよりほんの少し広めに弦の位置を決めています。

ネック側のポールピースのやや内側、ブリッジ側ピックアップのやや外側を通るようにすることでなるべく磁界から外れないように気を遣っているわけです。

なので、サドル上の弦溝の位置は少しずつ均等にずれていきます。これらをご自身で作業されるのは非常に困難だと思われますので、お困りになったら取り付けを御相談下さい。

サイトの修理ページはこちら。  早速メールでお申し込みの方はこちら

各ピックアップのポールピース

実際に弦溝を切って取り付けてみたところです。まだいろいろと仮付けなので、ここからさらに最終調整ですね。

溝を切ったところ


P-90のハムノイズキャンセルについて【レスポールスペシャルの改造-4】

ピックアップの入れ替え作業をしていて気がついたことがあったので書いておきます。

これがトーカイに載っていたアンバーのP-90タイプです。 こうして近づけるとくっつきます。 逆巻き逆磁極になっているので、センター時にハムノイズをキャンセルします。

アンバーP-90

で、こちらがギブソンです。 同磁極なのでくっつきません。 つまりハムノイズをキャンセルしない仕様になっています。

ギブソンP-90

ブリッジ側はN極。

ブリッジ側の磁極

ネック側もN極です。

ネック側の磁極

ちなみにブリッジ側は8.09kΩ。 (直流抵抗値は気温でどんどん変わるので参考ですが)

ブリッジ側の抵抗値

ネック側が8.07kΩ。 おそらくネック側ブリッジ側の違いはなく同じものが付いているということでしょう。 スペシャルの発売当時の仕様は詳しく知りませんがこれがビンテージに忠実ということなのでしょうね。

ネック側の抵抗値

ということは、これを逆巻き逆磁極にすれば、スイッチがセンターの時、レスポール・スペシャルのハムノイズは今より減らすことができるということではないでしょうか。

P-90はシングルコイルであるだけでなく、コイルの形状が平たくてループ・アンテナになって電磁ノイズを受ける面積が広いです。

私が同行させて頂いたWILLPOLISツアーでも会場建物に備え付けられている客電が電磁ノイズを出していて、レスポール・スペシャルがそのノイズを拾うことがありました。 もしかするとピックアップの改造で良くなるかもしれませんね。

もちろん磁力線の流れが変わるので音に影響がないとは言えないわけで、BUMP OF CHICKENのような音作りが極めて繊細な現場ではじっくり試す必要があるとは思います。

配線は分解すればホットとコールドの入れ替えができそうです。 フェンダーのようにポールピースに直接コイルを巻いているわけではないので、コイルの巻きはじめと巻き終わりどちらをホットにしても問題はないと思います。

配線の取り替え

マグネットはワックスでくっついてはいますが、少し力をかければ外れるようなので内と外を入れ替えることで逆磁極にできそうですね。

マグネット