配線のやり直し【フェンダーJB64レリックの修理-2】

なぜか反対向きに付いていたコントロール・キャビティのブラスプレートは無事に取ることができました。 さりげなく正しい向きに戻しましょう。

ブラスプレートの取り外し

ピックアップ取り付けビスの穴を埋めたので新しく開け直します。 位置出しは現物あわせで。

穴位置を決める

こんな感じ。

穴位置

ブラスプレートをつないでいきます。 弦アースも含めて母線でジャックへつなぎます。

ブラスプレートの配線

ここまでやるとアッセンブリーの配線も気になってきてしまいます。

もとのアッセンブリ

ここもやりなおしました。

アッセンブリの作り直し

ピックアップからの線もつないで完成です。

配線のオーバーホール

 

ヒーター修正をしたネックを取り付けました。 木が柔らかいのかかなり逆反った状態から弦を張らなければいけません。

再組み立て

今のところとても良いコンディションですが、張力をかけてしばらく様子を見ます。

 


ハイブリッドJJピックアップの取り付け【FUJIGEN・JBタイプのピックアップ交換-2】

ハイブリッドJBピックアップの写真です。 配線を出すハトメ部分が普通よりひとつ多いです。 内側の層がフォームバー皮膜線になっていて中央のハトメ部からタップ線を出すことで’70s風のサウンドが得られます。

JB用ハイブリッド・ピックアップBJJ-HY.の商品ご紹介ページはこちら

その外側にエナメル皮膜線の層があってフルにならすと’60s風のサウンドが得られるようになっています。

BJJ-HY.

ポールピースの面取り、ボビンの組み立て、コイルの巻き上げまで全て手作業で製作しています。

BJJ-HY.

コイルを近くで見ると、手送りでランダムに巻いているのが分かってもらえると思います。

ランダム巻き

着磁が完了して配線材を取り付けたところです。

着磁と出力線の取り付け

ルーティングしたボディの方は、導電塗料の再塗布を行いました。 ここからアース線の取り付けです。

アース線を戻す

もとの配線では全てのキャビティからでたアース線はポットの背中に集まっています。 これはおそらく全て同じ長さの線を使用できるという製産時の都合ではないでしょうか。

「厳密に言えばどこにアースを集めるかでも音が微妙に違う」という研究を10年前ギタークラフト科時代していたのが後にフジゲンカスタムハウスの店長になった東原くんなので実は深い理由があるのかもしれませんね。

もとの配線はこんなかんじ↓

もとのグラウンドまわり

とは言え線が複雑になってメンテナンスがしづらくなるのを避けるため、今回はキャビティの導電塗料を結ぶアース線はコントロールキャビティ部で弦アースと一緒にまとめて母線をジャックに引きました。

楽器の場合、慣例的にボリュームの1番端子をポットの背中につなぐので、その段階でシグナル・グラウンドとフレーム・グラウンドが接していますので1点アースはそもそもほどけています。 そのあたりもまたいずれ書きましょう。

グラウンドをスッキリと

完成した配線はこんな感じ

配線完了

配線完了

楽器を組みたて直しました。 スイッチが4回路も入ったかなり複雑な配線ですが、収まるように作れたので何の抵抗もなくコントロールパネルが閉まりました。

弦を張ってしばらく置いておきましょう。 もうすぐ完成です。

再組み立て

 

 

 


ジャズベースの直列(シリーズ)or並列(パラレル)配線のバリエーションについて

スイッチポットを利用したジャズベースのシリパラ配線にはこれと・・・

ジャズベのシリーズ・パラレル配線その1

これがあります。

ジャズベのシリーズ・パラレル配線その2

上の配線パターンはSonicのターボJベースに採用されているものです。 ラムトリック時代にたくさん製作しました。

今回FUJIGENのJBタイプを分解していて気がついたのですが、以下のような配線が採用されていました。

FUJIGENのシリーズパラレル配線

そういえば確かにこれでも動きますね。 今まで全く気がつきませんでした。 なぜ今までこの配線と出会わなかったのでしょうか。

考えていて分かったのですが下の配線は、ひとつ上の配線とほぼほぼ同じで、斜めにショートカットせずにスイッチの接点をひとつ多く経由しています。

考えられるデメリットは・・・

「スイッチ故障のリスクが無駄に増える」

「スイッチポットは多くの場合オープン方式なので切り替え時に音が一瞬途切れるが、スイッチが多く挟まることでよりながく信号が途切れる方の影響を受ける」

などがありそうです。

一方メリットはスイッチのハンダ付け端子の穴を広げたり端子の向きを斜めにしたり、さらにはジャンパー線の絶縁をする手間なく手早く作業が可能であることでしょう。

たいしたデメリットでもないですし、この配線を選ぶのも作業の1秒1秒を削り出す努力の賜と言って良いでしょう。 こうやって価格と品質の両立をうまく両立した楽器をユーザーに届けているのだなあと感心した話でした。 このベースは勉強になることが多かったです。 小さな修理工房では考えないような工場ならではのアイデアにとてもドキドキしました。

 

 


Billy Sheehan好きなら分かる!【wife風レリックベースの組み込み-1】

レリック加工をしたテレネックPBを組み込みます。 ネックコンディションをシビアに気にされるお客さまのベースなので今回の木工加工はヤマ楽器さんにお願いしました。

少し太めのネックグリップ、大きめのポジションマークです。 トラスロッドアジャスト部の強度やヒーター修正のしやすさを考慮してボディ側アジャストで張りメイプル指板仕様になっています。スカンク・ストライプはありません。

フレットは生地研磨しやすいように仮で打っておいてもらいましたが、ここからジェスカーフレットに交換します。 ハイポジションだけ細いフレットを打ちます。

テレネック

ボディの追加キャビティのルーティングはこれからです。 ネックポケットがテレネック似合わせて四角くなっているくらいで他はまだ普通のPBですね。

PBボディ

雰囲気だけでもと、ネック側に載せる予定のEBタイプのピックアップカバーを載せてみました。

ピックアップカバーを載せてみたところ

どうなるのかワクワクしますね! お客さまの中での構想はもう何年にも渡っていますし、私と具体的な打ち合わせを始めてから早くも1年くらい経っています。私も早く完成が見たいです。

 


’60sと’70sのJBサウンドが選べるピックアップ!【FUJIGEN・JBタイプのピックアップ交換-1】

フジゲンのJBにBirdcageオリジナル、ハイブリッドピックアップを登載させていただくことになりました。

ハイブリッド・ピックアップは、60年代風JBサウンドと70年代風JBサウンドをスイッチでセレクトできるカスタム・ピックアップです。

フォームバー皮膜線とエナメル皮膜線を2層に巻き上げてハンドメイドしています。

Birdcage ハイブリッド・JBピックアップについてはこちらから。

フジゲンJB全景

スイッチを追加するなど、配線全体をやりなおします。 まずは分解していきましょう。

分解中

ふたつのピックアップをシリーズ配線かパラレル配線か切り替えられるスイッチが付いています。 これ以外にネック側ボリュームにもスイッチポットを追加して、ピックアップの出力を’60sか’70sか切り替えられるようにします。

(このシリーズorパラレルのスイッチ配線について後日追加記事を書きました。こちらから。)

もとの配線

もとから付いてたピックアップはネック側が7kΩくらい、ブリッジ側が8kΩくらいです。 新しく付けるピックアップは’70sではこれより少しおとなしめ、’60sではもう少しファットになります。

もとのピックアップを計測

量産ピックアップならではの工夫が見られます。樹脂製のボビンですが、プラスティックのバリが出ない方を内側に組んであって、コイルを巻くときに引っかかるなどのトラブルがないようにしてあります。

巻きはじめが断線トラブルの原因になることがあるのですが、そうなりにくいように巻きはじめを逃がして巻いておいて、最後に巻きはじめの端末処理をしているようです。 そのための黒い仮止めテープです。

ピックアップ

ポットのスペーサー・ワッシャーにも驚かされました。8ミリ軸のポットにジャック用の大きめのナットが付いています。 これはねじ山が噛んでいるのではなく、ポットを取り付けたときの高さ調整です。

これを8ミリのナットですると、大量のポットに手でグルグルとナットを回してつけることになります。その手間を省いてしかも均質に、かつ、なかなかなハイクオリティを維持するアイデアだと思います。

国産ギター工場の「余計な手間を省きつつ、その分、低コストで高品質に仕上げる」姿勢がこんなところに。 さすがですね。

ポットのスペーサー

スイッチポットを取り付けるには少し深さが足りません。ルーティングが必要です。

ルーティングの準備

4ミリほど掘り下げました。

ルーティング中

これでバッチリ取り付けられそうです。

ルーティング後

コントロールパネルのアッセンブリーを作っていて気になったのですが、金型故障で缶ケースが省略されたあとの卵焼き型国産オイルコンって方向性はなくなったのでしょうか。

缶ケースに入っていたときはケースに直接蝋付けされているほうをグラウンドに持っていくことでシールド効果が得られました。

最近のビタミンQ

手持ちを見てみたところヒグチのオイルコンはマルコンの下請け時代から一貫して文字の書き終わりがアウトサイドです。 一方このビタミンQは逆になっていますね。 もしかしたら製産している工場ではなく、ブランド側スタッフがあとからシールを貼っているとかあるかもしれませんね。

あまり気にしすぎない方が良さそうですね。初期JBピックアップのコイルのように巻き終わりをグラウンド側にするみたいなシールド方式があったりするかもしれないので、一応文字の通りにつけてみましょう。

オイルコンのアウトサイドについて

アッセンブリーはこんな感じになりました。

アッセンブリーの完成1

なぜこの段階で写真を撮ったかというと、ピックアップからの線をつなぐと肉眼ではきれいに整理されて見えても、写真でみると複雑に絡まっているように見えることがあるからです。

アッセンブリーの完成2