フェンダーのジャズベースです。64年仕様でレリック加工がされているものです。
各弦の音量バランスが微妙で、ピックアップの高さを変えようとしたらネジ頭が錆びていてなめてしまったそうです。
とは言え、ネックが少し順反っていますし弦高も高めですから、そういったところで4弦の低音が大きく出ているということもあるかもしれません。振動系を無難なセッティングに戻すような調整もしてみることになりました。
トラスロッドナットを回す前にグリスを入れます。 二重にタップが立っていて一度外すとどちらが正しい溝なのか手応えで探すのが難しいですね。
ついでなのでジョイントの深さを測ってみました。 深さや仕込み角など謎が多いですからね。
何度もネックを外してロッド調整をしてみた結果、トラスロッドだけでは修正しきれないハイポジションの起きがあるので部分的にヒーター修正を試みることにします。
錆びたピックアップとめビスはこちら。 レリック加工の一環なのですが、その後さらに酸化が進んだのだと思われます。 クッションもへたっていてこれ以上ピックアップが持ち上がってきません。
まだなんとか回せそうな気がします。このネジはずしの出番です。
もう一回空回りしたら終わりそうなので丁寧に全体重をかけながら体で回していきます。ナベネジなので横からプライヤでくわえることもできるのでそんなにシビアな作業ではないですが。
みごととしか言いようのないさびさびのネジがせいぞろいです。
キャビティが錆だらけなのでピックアップのコイルなども心配ですね。救出に向かいましょう。
コントロール・キャビティを開けました。 ヨーロッパ輸出向けの環境基準シールが貼ってあります。64年の古き良きアメリカと現代が入り交じるなかなか味わいのある風景です。
ピックアップを掃除しようとカバーを外してみて気がついたことが。 コイルが浮いていて恐ろしいことになっています。
内側へワイヤを倒し込んで溶かしたパラフィン・ワックスで固定しましょう。
無事導通もあります。ネック側7.5kΩ、ブリッジ側7.8kΩでした。
ねじ穴の中もものすごく錆が付着していたので、ねじ穴を広げるようにドリルでついて錆を取り出しました。
オーナー様ご自身で安心してピックアップ調整ができるようにするのが目的です。今後また錆びるようでは不安なので一度埋めて開け直します。
穴埋めをしたところです。タイトボンド3を使ってみました。 一晩、乾燥時間を取ります。
クッションがへたっていて調整ができなくなっていましたので交換します。 バネ入りのクッションにするには深さが足りませんし、レリックを掘るのも無粋な気がするので今回はゴムクッションの交換にしました。
ネックはヒーター修正中です。 何回かに分けて少しずつ動かしていく感じになりそうな予感です。 今日はここまで。
しかしこのコントロール・キャビティのブラス製アース・プレートはなぜ前後反対向きに付いているのでしょう(笑) 完全にうっかりでしょうね。
何ごともなかったようにそっと向きを変えたいですね。