ピックアップが上下に動いてしまう【レスポールスペシャルの調整】

モントルー製のバダス型ブリッジの取り付けでお預かりしました。

レスポールスペシャル全景

もともと付いているバーブリッジにあわせてアンカーが斜めに打たれていますし、あえてセンターからずらして打たれているため、バダス型に変えたときにサドル溝が中央にきません。 溝を切らないで取り付けると弦が斜めにずれていって弾けるようになりません。

バダス型ブリッジ

ネックが順反っているのでトラスロッドで調整します。 ロッド回りの塗装を落としてキレイに掃除しましょう。

トラスロッドナットの掃除

ロッドはほとんど回っていませんでした。調整するとほぼ真っ直ぐになりました。

トラスロッドの調整

ヒスコレのスペシャルと違ってピックアップの高さ調整ができるのは良いのですが、バネの反発が弱く、少し押すとピックアップが下がってしまいます。 弾いていてもP-90がパカパカと動いてしまってアンプからも少し音がします。

スプリングが弱い

中を開けてみたとことです。 ピックアップの取り付けビスは金属プレートに通っています。底にバネが入っているのですが伸びきった状態で入っていてあまりきいていないようです。

バネを縮めるようにスペーサーを入れようかとも思ったのですがあまりテーパーのないタイプのバネなので縮めるとバネが自身で干渉して可変幅がなくなるのではないかとも思えてきました。

中のスプリングが伸びきっている

両サイドにクッションを追加してみることにしました。

クッションを追加

溝切りが完了したところです。

バダスの溝切り

ネックの差し込まれた角度やピックアップの位置によっていろいろ現物合わせを考えるのですが、このギターの場合はブリッジ側ピックアップのポールピースから1弦が外れない範囲で弦間を広げつつ、指板エンドで左右対称にフレットが余るように位置決めをしました。

バダスのサドル溝切り後

バダススタイルのブリッジの取り付け方については以前この記事でも詳しく書きましたのでご参考に。

フレットもキレイにしました。指板の仕上げが粗いことをオーナー様が気にされていましたが、そこも少し良くなったと思います。

フレットのクリーニング

弦を張って作業は完了です。 トラスロッドがどのくらい後から効いてくるか少し様子を見ます。

改造完了

レッドもカッコいいですね。 個人的にはナチュラルのスペシャルも好きです。

 


配線のオーバーホール【フェンダージャパンJBのノイズ処理-2】

OBP-3の配線をやり直しながら、キャビティに塗られた導電塗料にグラウンドを引いていきます。 これはもとの配線ですがさすがOBP-3ものすごい配線の本数です。

もとの配線

周波数可変のスイッチが付いていますが、ついでなのでここの配線もやり直そうと思います。

スイッチ回りのもとの配線

ピックアップを外してみたところです。スポンジの下は塗られていませんね。むしろループアンテナとしての指向性から言って塗られていない方向からノイズが入ってくるのではないかとも思われますので塗り直します。

ピックアップの下

ポットの向きを180°変えるために少し掘り広げます。

ルーティング前

ルーターでほった後がこちら。ポットの向きをそろえることができました。 斜めに付いていたバランサーとボリュームも真っ直ぐ付けられました。 これで導電塗料とハンダ付け端子のショートも避けられます。

ルーティング後

導電塗料を塗り直してグラウンド線を引き回したところです。 これでノイズの低減効果が得られます。

導電塗料の再塗布

スイッチキャビティは弦アースの途中下車で対応しました。

スイッチキャビティのグラウンド配線

スイッチの配線もやり直します。 実際にはスイッチが回転してしまったときのことを考えてもう少し内側へ抵抗を移動させましたがほぼこんな感じです。

スイッチの配線準備

ポットどうしのグラウンドを先に配線しました。なかなかじょうずにできました。

コントロールの配線準備

ボリュームの1番端子はこの記事で書いた技法でハンダ付けしました。 とても地味なテクニックなのですが気持ちよくハンダ付けできるせいかFacebookページで一番読まれた記事になりました。

下はスイッチキャビティに向かう線なのですが、なぜかバッテリーキャビティを経由しています。そこはシールドしなくていいのかと考えてしまいますし、配線が伸びればノイズを受ける面積も増えますので対策をしても良いところです。

周波数可変スイッチのもとの配線

というわけで直結する穴を追加してみました。

ロングドリルで配線穴をあける

完成した配線がこちら。

完成した配線1

 

イン&アウト、電源、グラウンド、周波数可変4本、3バンドEQに各3本も配線がありますので、なるべくキレイに配線しましたがこのくらいですね。

完成した配線2

 

Birdcageがハンドメイドで製作している配線の本数が少ないプリアンプもありますのでもしご興味がおありでしたらご覧下さい。

こういう5個穴のコントロールプレートに載った状態で配線されたプリアンプを販売しても良いかもしれませんね。また考えます。

 


症状のチェック【フェンダージャパンJBのノイズ処理-1】

あるときからノイズが多くなってしまったというフェンダージャパンのジャズベースをお預かりしました。 アギュラーのOBP-3を登載してあります。

手を離すと「ビー」と鳴ることがあるということです。 弦を手で触るとおさまるということなので通常導電塗料で解消できそうな症状です。

フェンダージャパンJB全景

コントロールを開けてみました。 なんと導電塗料が塗られています。 それでも手を離すとノイジーだということなら、導電塗料がアースに接続されていないパターンが疑われます。

計測してみたとこと導電塗料は塗られているだけでグラウンド電位には接続されていません。

導通がない

ミドルの周波数可変スイッチを追加したキャビティにも塗られています。 こちらもアースと導通がありません。

スイッチキャビティも導通なし

アースとつながっていない、いわゆる「浮いている導体」はアンテナとなって外来ノイズを集めて、電磁誘導の原理で信号ラインに入り込みます。 むしろ塗らない方が良いくらいの状態になります。 裏蓋に丁寧に貼られているアルミテープもこのままではノイズ源になっています。

これは以前楽器をいじったリペアマンさんのウッカリか、お客さまがご自分で塗られたかのどちらかでしょう。これらをひとつずつグラウンドにつないでいきましょう。

裏パネ

ここでひとつ問題があります。5個穴コントロールパネルにありがちですが、キャビティの広さやポットの大きさの問題で中身が入りきらず、ボリュームとバランサーが斜めに付けられています。

少しでも回転してしまうとキャビティの側面にハンダ付け端子が触れてしまいます。今は導電塗料が宙に浮いていますから音が出ますが、これを今回アースするとボリュームがゼロになっているのと同じ状態になって音が出なくなってしまいます。

今までビーと鳴っていたのはもしかすると導電塗料が集めたノイズを信号ラインに接触させていたからかもしれません。 なんとかポットを真っ直ぐ取り付けたいと思います。

ポットが収まっていない

全てのポットを写真で言う右向きに付けようとすると、一番右のポットがキャビティに干渉します。そこを少し掘り広げるか、ボリュームを基板直づけタイプのような超小型のものにするかしかないと思われます。

キャビティとポットの関係

導電塗料のグラウンド線を引き回すのにもあちこちバラしたいですし、一度バラしてルーティングしましょうか。