まずはフレットのすり合わせから【SEYMOUR DUNCANの修理-1】

古いダンカンのギターをお預かりしました。 しばらく弾かれていなかったようで、あちこちくたびれてしまっています。しっかりメンテナンスして弾けるギターにしていきましょう。

セイモア・ダンカン全景

アームがなくなってしまったようです。これは部品を仕入れましょう。 かなりホコリが付いているので分解清掃が必要ですね。

アームがない

どうもスイッチの様子がおかしいようで基本的に音が出ません。 ミドルに関してはどうやっても何も出ません。 ボリュームもホコリでやられているみたいなので、このあたりの部品は全部取り替えようと思います。

センターの音が出ない

ミドルのピックアップをチェックしてみました。 少なくともコイルの巻きはじめと巻き終わりのアイレット部分では導通があるようです。10kΩとはまた大きな値ですね。

(後日修理して計測したら6.5kΩでした。分解清掃をしていきましょう。【SEYMOUR DUNCANの修理-2】

センターピックアップの導通確認

ロックナットの部品が一部ありません。ここはもうロックナットごと新品に交換しようかと思います。

ロックナットの部品が足りない

キャビティの中はホコリがすごいですね。 一度すべて分解してお掃除しましょう。

お掃除が必要なスプリング・キャビティ

ピックアップ・キャビティもかなりです。 配線もやり直すわけですから一度分解して清掃しましょう。

ピックアップもお掃除が必要

ペグもお掃除します。

ペグもクリーニングしたい

ネックのコンディションはそんなに悪くなく、フレットが減っている分をすり合わせで調整していきます。

指板の幅が縮んだのかフレットの端が少し飛び出していますので、やすりで削って調整していきます。

フレットサイドがはみ出ている

フレットのすり合わせをしているところです。フレットが大きく、減りも多かったのですり合わせで、削る量も多めですね。

フレットのすり合わせ

明日はこれを仕上げていきます。

 

 


X-Blenderのスイッチ交換修理

珍しくエフェクターの修理です。 どうもスイッチの寿命がきてしまったということで交換を依頼されました。 見たところ普通のフットスイッチで問題なく作業できそうだったのでお受けしました。

X-Blender

もとのスイッチはこんな感じ。長く使ってスイッチが回ってしまっていますが多分最初は真っ直ぐだったのだと思いますよ。

スイッチの接触が不安定

新しいスイッチに交換しました。 同じロットのフットスイッチでしょうから、まだ不具合が出ていない方のスイッチも含めて両方同時に交換しておきました。

スイッチを交換

ジャックの接触も心配されていたので接点材を塗ってからよく拭き取っておきました。 ここはそんなに錆びてもいませんし問題ないと思います。

ジャックの汚れ掃除

ジャックが緩むとコールド側がオープンになってしまう配線のようですからしっかり増し締めしておきましょう。

それにしてもこのペダルは便利ですね。私もベーシストなのでこういう原音を混ぜることができる機材は興味がありますね。 さすがXotic。


ネックのコンディションを見てみましょう【Ibanezのネック修理-1】

Ibanezをお預かりしました。 長く使っている間に弦高が上がってきてしまったようです。 ペタペタまで下げて欲しいというご要望です。 ネック・コンディション、ボディの変形、トレモロ・セッティングなど原因はいろいろ考えられるのですがまずはネックからです。

Ibanez全景

5弦の1フレットと最終フレットをおさえたところです。ハイポジションには隙間ができますね。順反っています。ローポジションはむしろ逆反って弦がフレットに張り付いています。

ハイポジション起き

トラスロッドがどのくらい締まっているかもチェックしましょう。2ウェイかと思ったらナットが外せました。グリスを入れておきましょう。

トラスロッドナットにグリス

昆虫が巣立った形跡のあるロトマティックタイプのペグは一度外してお掃除します。トルクが軽くなっていますので少し軸のネジを締めてみようかと思います。

ペグを外す

ロッドはよく効きますが、もう少しネック全体を伸ばして負担を和らげてあげたいです。ローポジションを真っ直ぐにしたときにハイポジションにかなり順反りが残ります。何回かに分けてヒーター修正が必要になりそうです。

ネックの反り具合を見る

今日のところはまず全体の順反りを取っていこうと思います。

ネックのヒーター修正

 

配線に関してはノイズも特にないのでお掃除だけしようかと思ったのですが、ふたを開けてみると中から配線の皮膜などゴミが出てきました。

配線1

裏蓋に挟まれた線もありますし、ここもきれいに配線を引き直しても良いかもしれません。

配線2


PBピックアップのねじ穴の開け方

PBピックアップ取り付けついてです。 先日の加工ではこんなふうに斜めにねじ穴をあけました。

ネジ穴を開ける

意図としてはナベネジの底がカバーにまっすぐフィットするようにということなのですが、考えてみれば、ピックアップをどんどん高くしていくとピックアップはセンターから外へ移動していくことになります。

斜めにあけたとき

自分で出したセンターを否定するようで精神衛生上よくないです。

また楽器のオーナー様の好みなどで、音量の調整のために極端に傾けようとした場合、ネジが斜めになっている方が極端な旋回をしてカバーの外側が、ピックガードに干渉しそうです。

旋回軌道

そういう意味ではやはり通常通りの垂直ねじ穴がやはり良いのかもしれません。

真っ直ぐにあけたとき

ラムトリック時代にSonicセミナーでさんざんドヤ顔で言っていたことと考えが違ってきてしまいました。 静的に見れば良くても調整する工程を動的にとらえるとイマイチといったところですかね。

ネジ穴の位置決め

このベースに関しては良い位置で収まっているのこのままで問題ないですが、今後はこの方法は採用しないかもしれません。 ちょっとしたことですが考え出すと奥が深いですねえ。

 

 


錆びたピックアップとめネジの交換【フェンダーJB64レリックの修理-1】

フェンダーのジャズベースです。64年仕様でレリック加工がされているものです。

各弦の音量バランスが微妙で、ピックアップの高さを変えようとしたらネジ頭が錆びていてなめてしまったそうです。

とは言え、ネックが少し順反っていますし弦高も高めですから、そういったところで4弦の低音が大きく出ているということもあるかもしれません。振動系を無難なセッティングに戻すような調整もしてみることになりました。

JB64レリック全景

トラスロッドナットを回す前にグリスを入れます。 二重にタップが立っていて一度外すとどちらが正しい溝なのか手応えで探すのが難しいですね。

トラスロッドナット

ついでなのでジョイントの深さを測ってみました。 深さや仕込み角など謎が多いですからね。

ついでに計測

何度もネックを外してロッド調整をしてみた結果、トラスロッドだけでは修正しきれないハイポジションの起きがあるので部分的にヒーター修正を試みることにします。

ネック調整中

錆びたピックアップとめビスはこちら。 レリック加工の一環なのですが、その後さらに酸化が進んだのだと思われます。 クッションもへたっていてこれ以上ピックアップが持ち上がってきません。

錆びたネジ頭をなめている

まだなんとか回せそうな気がします。このネジはずしの出番です。

ネジはずし

もう一回空回りしたら終わりそうなので丁寧に全体重をかけながら体で回していきます。ナベネジなので横からプライヤでくわえることもできるのでそんなにシビアな作業ではないですが。

体重をかけて回す

みごととしか言いようのないさびさびのネジがせいぞろいです。

ビックリするくらいに錆びている

キャビティが錆だらけなのでピックアップのコイルなども心配ですね。救出に向かいましょう。

コントロール・キャビティを開けました。 ヨーロッパ輸出向けの環境基準シールが貼ってあります。64年の古き良きアメリカと現代が入り交じるなかなか味わいのある風景です。

JBの配線

ピックアップを掃除しようとカバーを外してみて気がついたことが。 コイルが浮いていて恐ろしいことになっています。

コイルワイヤがはみ出している

内側へワイヤを倒し込んで溶かしたパラフィン・ワックスで固定しましょう。

ワックスでコイルワイヤをおさえる

無事導通もあります。ネック側7.5kΩ、ブリッジ側7.8kΩでした。

断線していないかチェック

ねじ穴の中もものすごく錆が付着していたので、ねじ穴を広げるようにドリルでついて錆を取り出しました。

オーナー様ご自身で安心してピックアップ調整ができるようにするのが目的です。今後また錆びるようでは不安なので一度埋めて開け直します。

ネジ穴を広げる

穴埋めをしたところです。タイトボンド3を使ってみました。 一晩、乾燥時間を取ります。

タイトボンドで穴埋め

クッションがへたっていて調整ができなくなっていましたので交換します。 バネ入りのクッションにするには深さが足りませんし、レリックを掘るのも無粋な気がするので今回はゴムクッションの交換にしました。

クッション交換

ネックはヒーター修正中です。 何回かに分けて少しずつ動かしていく感じになりそうな予感です。 今日はここまで。

ヒーター修正中

しかしこのコントロール・キャビティのブラス製アース・プレートはなぜ前後反対向きに付いているのでしょう(笑) 完全にうっかりでしょうね。

JBブラスプレート

何ごともなかったようにそっと向きを変えたいですね。